【目的】
次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理を掘り起こすことを目的とする。今回は神奈川県で行事においての特徴を明かにしたい。
【方法】
神奈川県内の地域、横浜市中区・泉区・多摩区・鎌倉市・三浦市・横須賀市・大和市・相模原市・伊勢原市・秦野市・小田 原市・大磯町・山北町・真鶴町・清川村・藤沢市・綾瀬市等を中心に、その土地で生まれ育った方、嫁いでこられた年配者 の方に、1960年代頃の食生活について聞き取り調査を行った。調査結果から、行事にかかわる料理をまとめ、市史類からの文献 による補足調査も行った。
【結果】
神奈川県での、行事時の食関係をみてみると、年中行事の正月には、雑煮など、なかには、暮れに打ったそばを正月まで食した地域や、正月にうどんを食する地域もみられた。一月七日、小正月には、それぞれ粥類が用いられ、どんど焼きには、繭玉など作られていた。端午の節句には、柏餅が蓬を用いていた地域もみられた。そのほか、仏事のお盆や彼岸で、ぼたもちや、酒饅頭などがみられた。また、人生儀礼の葬儀では、高齢者の場合、長寿を祝う意味から、祝い事と同様に赤い色の赤飯や白いおこわにささげ又は小豆を加えたものを配る習慣がみられた。地域によっては、えびす講・稲荷講などもみられた。氏神様を祀る祭りでは、太巻きや赤飯がつくられる地域もある。それら料理などは、行事以外でも人寄せや来客時に用いられる料理もみられた。それらの料理に使用された食材は、特別な時に用意する品もあるものの、その地域でその時期に手に入る食材や品でそれらの料理のほとんどを賄われることが多かったのが特徴といえる。