日本調理科学会大会研究発表要旨集
2021年度大会(一社)日本調理科学会
セッションID: P-k13
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特別企画 次世代に伝え継ぐ 日本の家庭料理 ポスター発表
栃木県の家庭料理 行事食の特徴
−自然の尊重と近隣との交流−
*名倉 秀子藤田 睦
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キーワード: 家庭料理, 栃木県, 行事食
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抄録

【目的】日本調理科学会特別研究平成24,25年度「次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理」の聞き書き調査に基づき,昭和30〜40年頃の栃木県における次世代に伝えるべき家庭料理を抽出すると共に,同地域について追加調査を実施し,行事食の特徴を把握することを目的とした。

【方法】栃木県内の6地域,那須野ヶ原,日光山間,両毛山地,渡良瀬流域,鬼怒川流域2か所を調査対象地域とした。対象者はその地域に30年以上居住している60歳以上の約20名であり,地域の暮らしや食生活について,その特徴と概要,印象に残っている暮らしや食,伝え継ぎたいと考える家庭の料理について聞き書き調査した。その中から祭りや行事に関する料理とその行事の概要を把握した。

【結果・考察】栃木県の地形は,県北の日光や那須連山の山間部,県央と県南の関東平野北縁部を占める平野部で,境界部に海岸線を持たない内陸県である。主な行事食について,正月は耳うどん,八つ頭の煮物,水ようかんなど,節分には福茶とゆずのみそ漬け, 2月初午の日ではしもつかれ,田植え時は赤飯や身欠きにしんの煮物,田植え終了後にはさなぶり饅頭などがあがった。さらに,十五夜のけんちん汁,収穫祭には芋串や里芋の煮物,梵天祭りでは鮎のくされずしなど,いずれも米作りを中心に五穀豊穣を願い,年中行事の行事食がご馳走として調理されていた。また,通過儀礼の弔い時には,白飯,うどん,豆腐の汁物,がんもどきの煮物,酢の物や白和え,煮豆などの精進料理が近隣の人に作られていた。昭和30〜40年頃は農家戸数も多く,農作業にまつわる行事,地域や集落での祭りや神事,ご節供,通過儀礼行事などにおいて,地域で収穫された食材を使い,手間をかけた料理が多くみられた。

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