【目的】ビーフコンソメは,ブイヨンに牛肉や野菜を加えて煮込んで調製する,透き通った琥珀色のスープである.その調製は,食材を長時間煮だす必要があるが,お湯で溶いて手軽に使用できる粉末状の製品も市販されている.これら手作りや市販ビーフコンソメの呈味特性は異なると考えられるが,その詳細は不明な点が多い.本研究では,コンソメの呈味特性に関する基礎資料を得ることを目的に,プロの料理人が調製したビーフコンソメと市販品の呈味特性を比較した.
【方法】プロの料理人は一流シェフを多数輩出している料理学校に所属する熟練者2名を選定し,市販の液体ブイヨンをベースとして,基本的な調製方法・食材の種類と重量・出来上がり重量の目安量を統一してビーフコンソメを調製した.市販品は粉末状のビーフコンソメ3種を表示の分量に従い沸騰超純水で溶解した.分析項目は,味覚応答(味認識装置)と呈味成分(食塩相当量,遊離アミノ酸類,核酸類,糖類,有機酸類および脂肪酸類)の濃度を分析した.分析結果を,ブイヨン,料理人のビーフコンソメならびに市販間で比較して,その呈味特性を評価した.
【結果・考察】料理人のビーフコンソメはブイヨンと比べ,酸味・旨味・塩味が増したが,調製に用いた食材由来の食塩,遊離アミノ酸類,核酸類,糖類及び有機酸類が顕著に増加したためだと考えられた.市販品はブイヨンに近い味覚応答を示したが,これは遊離アミノ酸類,糖類および有機酸類の濃度が低いためだと考えられた.市販製品間で比べても,食塩相当量,L-グルタミン酸,核酸類,スクロース,コハク酸および脂肪酸類の濃度に差異があり,製品間で主要な呈味成分が異なることも明らかとなった.