日本調理科学会大会研究発表要旨集
2021年度大会(一社)日本調理科学会
セッションID: 1A-5
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口頭発表
調理科学実験に向けた簡便・迅速なグルタミン酸測定用デバイスの開発
*山口 浩輝村居 景太古内 覚髙橋 一敏笠松 千夏巽 萌美水越 利巳宮野 博岡内 俊太郎杉木 正之
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抄録

【目的】グルタミン酸は、うま味物質として様々な食品中に含まれている。一般的に、グルタミン酸は液体クロマトグラフィーを用いて分析される。この方法は試料中の濃度を他のアミノ酸と共に高い精度と正確性で測定できる一方で、大型かつ高額な分析装置、複雑な前処理と分析に携わる高い専門性が必要なため、調理現場や授業の中での測定は困難であった。調理科学実験の更なる発展のために、我々は簡便かつ迅速に試料中の対象化合物を測定できる酵素法に着目し、グルタミン酸測定デバイスの開発と調理科学実験での実用性検討を目的とした。

【方法】1.水質検査キットとして広く使用されている持ち運び可能な小型デバイスである「パックテスト®」および専用の小型吸光度計である「デジタルパックテスト®」にグルタミン酸分析用酵素を適用し、その性能を評価した。2.本デバイスを用いて複数の食品中のグルタミン酸を測定し、調理科学実験への応用可能性を調査した。

【結果】1.試作したグルタミン酸測定用のパックテストは、食品中の遊離グルタミン酸を食品溶液の希釈のみで測定可能であり、測定時間は10分以内であった。簡便な操作によりグルタミン酸が測定できることから調理現場でも使用可能である。2.加熱時間の異なる牛肉スープと抽出方法の異なる昆布だしを調製し測定に供したところ、調理条件に応じたグルタミン酸濃度をその場で分析することができた。本測定デバイスを官能評価と併用することで、うま味の客観的な指標を提供でき、調理で得られる味風味の更なる理解促進が可能であることが示唆された。今後、他の調理現場や調理科学実験を対象とした更なる応用可能性を確認する予定である。

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