【目的】灰干しとは、火山灰を用いた熟成並びに乾燥加工法の一種である。海産魚に対して用いられることが多い。研究者らは魚介類だけでは無く、野菜、果物等にも活用検討を行っており、加えて灰干し処理素材を用いた加工食品への応用検討も行っている。本研究ではその対象を食肉とし、脱臭作用や素材の食感改善など、灰干しを施した食肉にどのような変化が起こるか検討確認を行った。
【方法】1)灰干しの手法は三宅島灰で行われている加工手法を基本とし、火山灰処理工程前に食材を浸漬する食塩水濃度を2〜7%間でいずれの濃度が試料食肉を活かす条件となるか検討を行った。2)対象試料は牛と豚とし、豚肉は肩ロース、モモ、タン、ハツ、小腸、スネ、牛肉は肩ロース、モモ、スネを用いた。形状はブロック、スライスを中心に検討を行った。灰干しに用いる火山灰は環境庁三宅支庁から許可された三宅島火山灰を使用した。3)灰干しと灰干し未処理試料に対し、色差測定、L-グルタミン酸定量、食味試験等を行った。
【結果】火山灰を用いる工程前の食肉浸漬食塩水の濃度差により、臭みの抜け具合と灰干し後の食感に変化が生じた。本研究において最適条件となった4%食塩水浸漬灰干し豚肩ロースにおいては、豚特有のにおいが軽減され、焼成後の食味は、くん煙処理を行っていないにも関わらず、ロースハムのような風味、食感を感じた。灰干しに適した食肉の脂肪と赤身の比率は、赤身の割合が多い食肉の方が食感・風味共に高評価を得た。L-グルタミン酸定量においては、灰干しを施した試料の方が微増する傾向を捉えた。