日本調理科学会大会研究発表要旨集
2022年度大会(一社)日本調理科学会
セッションID: A-15
会議情報

口頭発表
ソバ内層粉と韃靼ソバ粉を利用した天ぷら衣の抗酸化能評価
*中村 千春近藤 翼二山 幸子谷口 明日香小林 理恵
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】これまでに雑穀粉を使用した天ぷら衣の健康機能性を検討した中で,普通ソバ全層粉を用いた天ぷら衣は小麦粉に比べ高い抗酸化能を示した。一方で,その衣の色は灰褐色を呈したことから天ぷら衣としての色の嗜好性は低かった。これをふまえ,高い抗酸化能を維持しつつ嗜好性を向上させるため,抗酸化能は高くないものの色白の普通ソバ内層粉に,食用ソバの中でも抗酸化成分のルチンを豊富に含む韃靼ソバを少量配合することが有効であると仮説を立てた。本研究では各種ソバ粉および配合ソバ粉で調製した揚げ衣の抗酸化能を比較し,ソバ内層粉と韃靼ソバ粉の配合効果を検証した。

【方法】試料は,普通ソバ内層粉,全層粉,外層粉および韃靼ソバ粉の4種と,内層粉:その他ソバ粉を9:1で配合した3種とし,各揚げ衣の抗酸化能を測定した。各揚げ衣は凍結乾燥後,70 v/v%エタノール溶液を用いて37℃で30分間加熱抽出を行い,その上澄みを測定試料とした。抗酸化能は,SOD様活性およびペルオキシルラジカル捕捉活性から評価した。

【結果】普通ソバ内層粉に韃靼ソバ粉を配合した揚げ衣の抗酸化能は,SOD様活性で 77.2 U/mL,ペルオキシルラジカル捕捉活性のIC50値は 2.7%であった。このSOD様活性の値は,普通ソバ内層粉およびいずれの配合ソバ粉揚げ衣よりも高かった。しかし,ペルオキシラジカル捕捉活性では,普通ソバ内層粉揚げ衣と比べると優れた値であったものの,配合ソバ粉揚げ衣間では有意な差は認められなかった。2つの活性酸素の消去機構において影響を及ぼす物質に違いがあることが推察されたが,普通ソバ内層粉を使用して白色に仕上げた天ぷら衣の抗酸化能を向上させるために,韃靼ソバ粉を配合することは合理的であると考える。

著者関連情報
© 2022 日本調理科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top