日本調理科学会大会研究発表要旨集
2022年度大会(一社)日本調理科学会
セッションID: C-17
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口頭発表
果実ジャム製造時の加熱工程が糖組成および水分活性に及ぼす影響
*木下 歩
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抄録

【目的】果実ジャムでは、糖度と水分活性との間に高い相関があることが報告されているが、同程度の糖度を示す果実ジャム間で比較すると水分活性に差が生じる。そこでその要因を明らかにするため、果実ジャム製造時の加熱工程が糖組成および水分活性に及ぼす影響について検討した。

【方法】はじめに、糖類を含む溶液を酸性条件で加熱した場合の水分活性の変化を確認するため、クエン酸を添加したショ糖溶液(30~65%、15点)について、未加熱および2時間加熱した試料を作成し、それぞれ糖度と水分活性の検量線を作成した。次に、ブルーベリーを用い、原材料の混合比や加熱時間を変えてジャムを作成し、水分活性、糖度および糖組成(HPLC)を調べた。また、兵庫県内製造の果実ジャム24点について、同様の項目を調べた。

【結果・考察】ブドウ糖溶液と果糖溶液は、同じ糖度のショ糖溶液よりも低い水分活性を示すことが報告されている。酸性条件で2時間加熱したショ糖溶液の水分活性は、同程度の糖度を示す未加熱のショ糖溶液より低下する傾向がみられた。次に、作成したブルーベリージャムについて、同程度の糖度を示す試料間で比較した場合、より長く加熱した方が水分活性は低下し、加熱時間が長いほどショ糖の割合は低く、ブドウ糖と果糖の割合は高まる傾向がみられた。また、兵庫県内で製造されたジャムについて、同程度の糖度を示すジャム間で比較すると、ショ糖の割合が低く、ブドウ糖と果糖の割合が高い方が水分活性は低下する傾向がみられた。このことから、果実ジャム製造時の加熱工程において、ジャムの原材料に含まれるショ糖がブドウ糖と果糖に加水分解されることで水分活性を低下させる可能性が示唆された。

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