日本調理科学会大会研究発表要旨集
セッションID: 2P-28
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ポスター発表
食物繊維を多く含むにんじんの調理条件がin vitro 胃内消化挙動に及ぼす影響
*芝崎 本実野口 律奈前田 竜郎小林 功
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抄録

【目的】食品の加工や調理操作では加熱が多く用いられる。特に食物繊維を含む野菜では,加熱温度(90℃以上で軟化,60℃付近で硬化)や油脂添加後の加熱などの調理条件によって,テクスチャーが変化する。これらは野菜を食べやすくするだけでなく,摂食後の消化性にも影響する。しかし,調理条件が異なる野菜の胃内消化まで考慮した研究は少ない。本研究では,定量的なぜん動運動の駆動や消化プロセスの可視化が可能なヒト胃消化シミュレーター(以下,GDS)を用い,にんじんの調理条件の違いがin vitro消化挙動に及ぼす影響を検討した。

【方法】にんじん(5 mm角)は生,ゆで(沸騰5,15min),炒め(油脂添加),低温ブランチング(65℃,15 min)の5種類を調理条件とした。人工唾液10 mLと2分間混合後,人工胃液240 mL(pH1.3)を加え,GDS容器に投入した。装置内温度は37 ℃,180分間のin vitro胃内消化試験を行った。ぜん動運動の進行速度と周期はそれぞれ2.5 mm/sと1.5 cycles/minに設定した。消化試験終了後,胃消化物を目開き(d)の異なる篩(d:3.35~0.60 mm)を用いて分級し,各粒子サイズ画分の湿潤重量を測定した。

【結果・考察】生,ゆで5 min,低温ブランチングでは繊維に沿って裂け,切片になる様子が観察された。一方,ゆで15 minではにんじん同士がぜん動運動によって圧縮され,不規則に微細化した。炒めでは油に溶出したカロテン色素が人工胃液に浸透,拡散され,上面に油脂層を形成していた。さらに,にんじんの表面の油脂が摩擦を減らし,微細化は抑制されていた。調理条件によって,胃内消化挙動が異なり,消化時間や栄養成分の放出・拡散が異なる可能性が示唆された。

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