主催: (一社)日本調理科学会
会議名: 2023年度大会(一社)日本調理科学会
開催地: 県立広島大学
開催日: 2023/09/09 - 2023/09/10
【目的】水浴中で食材を加熱する家庭用低温調理器の普及により,食中毒の危険性が懸念されている。そこで,食材の加熱特性と物理的・化学的・食品衛生学的な品質特性を考慮するとともに,調理科学的な観点から加熱条件を確立することが求められている。本研究では,低温加熱調理過程における加熱・品質特性を同時に把握し,食品衛生学的な安全性と物理・科学的品質を担保可能な加熱調理条件を決定するための基礎的知見を得ることを目的とした。
【方法】試料には平板状のアメリカ合衆国産牛肉のサーロインとモモ肉を用いた。ポリ袋に入れた試料を55,60,65℃に設定した低温調理器(BONIQ Pro,葉山社中製)の温水内に設置した。牛肉内の温度を5 mm間隔で経時的に測定し,中心温度および温度分布の経時変化を取得した。また,加熱前後の重量,含水率,体積,表面および断面の色彩画像,牛肉と肉汁の中赤外吸収スペクトル,テクスチャーの測定を行った。
【結果・考察】低温加熱過程における牛肉の経時変化は,その形状や部位,筋線維方向などの特性により大きく異なった。また,各種計測情報を用いて部分最小二乗回帰分析による官能評価値の予測を試みた。その結果,は官能評価値(総合評価)の予測結果は実測値と良好に一致した。つまり,低温加熱調理過程における加熱特性と品質特性を定量的かつ同時に把握できることが示唆された。さらに,牛肉の特性を考慮した計算により求めた中心温度の経時変化に基づき,代表的な食中毒菌の殺菌効果を予測することができた。これらの結果は,科学的視点に基づいた加熱条件を定量的に提示できる可能性を示唆している。