【目的】煮物の研究において、煮物中の食塩総量を測る研究はよく行われている。しかし、煮物の塩分の分布などについて調べた研究は少ない。本研究では、塩分濃度や保存期間を変えた煮物中の塩分分布の違いを調べ、塩分量は同じであるがその分布が異なる煮物の官能特性について検討を行った。
【方法】煮物の試料は、2.5cm角のじゃがいもとだいこんとした。塩分濃度0.9%、1.5%、2.7%の煮汁とそれぞれの試料を加熱調理した。加熱後の試料は、冷却を行い、0、1、2、3日間保存後、各種測定を行った。煮物への塩分の浸透は、煮物試料の全体と表面部および内部の塩分濃度をそれぞれ測定した。同程度の塩分濃度である、①塩分濃度1.5%・1日保存、②塩分濃度2.7%・0日保存の試料を用いて、塩味の強さについて分析型官能評価を行った。
【結果・考察】じゃがいも、だいこんともに、試料全体の塩分濃度は、0日から1日保存にかけて有意な増加が見られた。0日保存の試料では、表面部の塩分濃度が内部と比較して有意に高く、塩分が表面によりとどまっていることが示された。その後、1日保存の試料では、表面部と内部の塩分濃度が同程度になり、塩分が内部まで浸透していることが明らかとなった。官能評価の結果、だいこんにおいて、塩分が内部まで浸透している①の試料に比べて、塩分が表面にとどまっている②の試料において、塩味を有意に強く感じることが明らかとなった。これらの結果から、煮物の塩分濃度が同じであっても、塩分の分布が表面にとどまっている試料の塩味を強く感じるため、食塩分布を変えることによって減塩の可能性が示唆された。