日本調理科学会大会研究発表要旨集
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  • 齋藤 公美子, 今西 花梨, 小林 寛菜, 平田 真唯, 畠中 芳郎, 武智 多与理, 髙村 仁知
    セッションID: 1A-1
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/06
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    【目的】演者らはグルテンフリー(GF)米粉パンの製パン時に高温水を添加する「高温水添加製パン法」を開発し、白米粉パン、玄米粉パンそれぞれにおいて品質を向上させることを報告してきた。しかしながら、これらの検討は同一の品種や粉体特性を揃えた米粉を用いていないため、精白の有無がGF米粉パンの品質に及ぼす影響については不明である。本研究では、米の精白および加水温度が製パン性および老化抑制効果に及ぼす影響を明らかにすることを目的とし、白米粉および玄米粉パンの比較を行った。

    【方法】令和4年度産「雪若丸」を湿式気流粉砕し、デンプン損傷度および粒度を同程度とした白米粉および玄米粉を用いた。米粉パンは5 ℃および 50~80 ℃(2 ℃間隔)の水で調製し、製パン特性評価(比容積測定、テクスチャー測定、断面観察、官能評価)を行った。また、生地については動的粘弾性測定を行った。さらに、0~48時間保存したパンについて、老化特性評価(糊化度測定、テクスチャー測定、水分含量測定、官能評価)を行った。

    【結果】玄米粉よりも白米粉の方が比容積は大きく、やわらかいパンが得られ、官能評価においても嗜好性が高いことが認められた。製パン性を最も向上させる最適加水温度は、白米粉70℃、玄米粉60℃であった。同じ加水温度において玄米粉の方が生地の粘弾性が高かったことから、玄米粉はやや低い温度であっても膨化に適する粘弾性を有していたことが示唆された。一方で、老化抑制効果については、冷水を添加したパンにおいては玄米粉の方が糊化度、水分含量、官能評価の項目で優れた結果となったが、白米粉は高温水添加をすることで玄米粉よりも顕著な老化抑制効果が認められた。

  • 今西 花梨, 角田 奏恵, 多川 万衣香, 齋藤 公美子, 畠中 芳郎, 武智 多与理, 髙村 仁知
    セッションID: 1A-2
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/06
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    【目的】玄米は機能性成分が豊富であるが、嗜好性や加工性が低いことが課題である。これまで、白米粉の一部を異種デンプンに置換することで、白米粉パンの製パン性に影響を与えることが報告されているが、玄米粉については検討されていない。本研究では、バレイショデンプン、タピオカスターチ、コーンスターチがグルテンフリー玄米粉パンの製パン性に与える影響について検討した。【方法】玄米粉は、令和4年に収穫された山形県産雪若丸を湿式気流粉砕法により製粉したものを用いた。玄米粉の粉体特性として粒度分布、デンプン損傷度、アミロース含量、タンパク質含量、総食物繊維含量、脂質含量、水分含量を測定した。パンの材料として玄米粉、食塩、砂糖、ドライイースト、米油、水を使用した。玄米粉の一部を異種デンプンに置換し、パンを調製した。パン生地の評価として、電子顕微鏡観察、動的粘弾性測定を行った。製パン評価として、比容積測定、テクスチャー測定、断面観察、色差測定を行った。【結果】デンプン置換しない玄米粉と比較して、バレイショデンプンを10%、タピオカスターチを30%、もしくはコーンスターチを30%置換することにより、比容積が有意に大きくなり(p < 0.05)、硬さは有意に低下した(p < 0.05)。また、これらの条件において、パン生地の粘弾性(G′, G″)は大きく低下することが示された。したがって、グルテンフリー玄米粉パンの調製において、玄米粉の一部を異種デンプンに置換することでパン生地の粘弾性を変化させ、玄米粉パンの製パン性に影響を与えることが示唆された。

  • 池ヶ谷 篤
    セッションID: 1A-3
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/06
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    【目的】

     食パンは水分量が少ないことから、唾液の分泌量が低下した高齢者等にとっては食塊形成が難しくなり、食べにくいことが予想される。バター、マーガリン等の油脂系スプレッドを食パンと同時に摂取することは、食塊の物性を改善するために有効であるが、あらかじめパンに油脂を多く混ぜることによって、食べやすさを向上させることを検討した。

    【方法】

     以下の3種類の条件でパンを焼成し、焼成したパンの特性として体積、重量、水分率、クラムのテクスチャーを測定するとともに、焼成したパンのクラムを用いて模擬食塊を調製し、物性を評価した。

    1:小麦粉に対して0~15%の割合でバターを添加し、パンを焼成。

    2:バター、マーガリン、ショートニング、牛脂、ラード、ココナッツオイル、キャノーラ油を小麦粉に対して5%の割合で用いてパンを焼成。

    3:キャノーラ油に12-ヒドロキシステアリン酸を混合し、一度加熱して固化させたものと、混合させただけで液状のものをそれぞれ添加してパンを焼成。

    【結果および考察】

     その結果、バターを5.0%添加することにより、焼成したパンのクラムおよび模擬食塊は軟化した。しかしながら、模擬食塊はバターの添加量を5.0%より増やしても、模擬食塊の物性が変化することはなかった。一方、パン生地に添加する油脂が固体の脂か液体の油であるかによって、膨張の程度は大きく異なり、固体の脂を添加することで、パンは大きく膨張し、クラムは柔らかくなった。固形化したキャノーラ油と固形化していないキャノーラ油を使ってパンを焼き、比較した結果、固形化したキャノーラ油は、液状のキャノーラ油よりも有意にパンを膨張させたが、クラムの硬さには差がなかった。

  • 森田 亜紀, 大塚 真衣, 大田原 美保
    セッションID: 1A-4
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/06
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    【目的】テクスチャーはベーカリー製品のおいしさを左右する特性で,焼成後の変化を客観的に把握し,変化を制御するための研究は重要である。本研究ではクロワッサンとメロンパンについて,焼きたてと保存後のテクスチャーの違いをアンケート調査結果に基づいて官能評価を行い,保存条件の異なるパンのテクスチャーと総合評価との関係を明らかにすることを目的とした。

    【方法】アンケート調査は先行研究から抽出したテクスチャー評価用語55語を示し,クロワッサン,メロンパン,食パンのテクスチャーを日常の食経験からイメージしてもらい,該当する用語を選択させた(n=183名,20歳代女子大学生)。選択された用語の度数を集計し,クラスター分析で用語の類似性を検討した。−4から+4までの線尺度を用いて官能評価(n=18)を行った。官能評価用試料は保存を行わない対照試料,対照試料を温度(4℃,25℃)と時間(24 h,48 h)を変えて保存したもの,再焼成したものとした。

    【結果】アンケートデータのクラスター分析の結果から,テクスチャー用語55語を8つのクラスターに分類した。分類をもとにクロワッサンは7語,メロンパンは8語を評価用語とした。官能評価の結果,クロワッサンは保存温度による違いは明瞭ではなかった。メロンパンは保存温度によって評価が異なり,25℃保存の方が “べたつき”や“パサつき”の増大が顕著であった。一般に澱粉の老化抑制の観点からパンの保存に冷蔵は望ましくないとされるが,本結果は逆の傾向であった。以上より,2種のベーカリー製品の焼成後の総合評価に関わるテクスチャー特性が明らかとなり,パンの種類によって保存条件の影響の受けやすさが異なることが示唆された。

  • 大田原 美保, 青木 七海, 森田 亜紀
    セッションID: 1A-5
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/06
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    【目的】ベーカリー製品のテクスチャーはおいしさと密接に関わり,テクスチャー変化の客観的把握と制御は品質保持のための重要な課題である。本研究では力学的測定で捉えたクロワッサンとメロンパンの保存によるテクスチャーの変化について,パンの水分含量および澱粉の老化との関係を検討した。  

    【方法】パンを焼成後,保存を行わないものを対照試料とし,対照試料を袋に入れて温度(4℃,25℃)と時間(24 h,48 h)をかえて保存した試料,対照試料を再焼成した試料を実験に用いた。一軸圧縮試験による試料の破断特性(レオメーター),パン全体,表層から約5 mmの外層,および内層の水分含量(ハロゲン水分計)を測定した。老化特性として各試料の凍結乾燥脱脂粉末の吸熱特性(DSC)を測定した。  

    【結果】応力-歪曲線と初期弾性率から,対照および再焼成試料は圧縮初期に層状生地(クロワッサン)やクッキー生地(メロンパン)の破断が生じたことが示された。4℃および25℃保存ではいずれのパンも単調に応力が増大して初期の破断は見られず,応力-歪曲線の特徴は保存条件により異なった。水分含量は保存により内層では減少し外層では増加したものの試料全体では保存条件によらずほぼ同値であったことから,パン内部で水分が移行したと考えられた。25℃保存の方が水分移行が大きく,4℃保存の方が澱粉の老化を示すDSCの吸熱量は大きかった。前報の官能評価ではメロンパンの25℃保存は4℃保存よりもパサつきが大きく総合評価は低く,クロワッサンでは保存条件による評点の違いは小さかった。以上よりパンのテクスチャーには澱粉の老化に加えて水分移行の影響も大きいこと,パンの種類によっても影響の受けやすさが異なることが示唆された。

  • 新井 美彩, 小松 栞, 露久保 美夏
    セッションID: 1A-6
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/06
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    【目的】もち性大麦(以下もち麦)は水溶性食物繊維β-グルカンを豊富に含み、各種調理品に用いられる機会が増えているがパンに用いた場合は膨化性の低さと硬さの増加が課題となっている。膨化性の低下にはβ-グルカンの影響が考えられることから、本研究ではβ-グルカンを添加した食パンを調製し、製パン性を明らかにすることを目的とした。【方法】強力粉300g、上白糖15g、食塩6g、スキムミルク6g、インスタントドライイースト6g、無塩バター15g、蒸留水204gで調製したパンをコントロールとした。コントロールパンの強力粉重量に対して大麦β-グルカンを6.7%、13.3%、20.0%の割合で置換した。全材料を混捏後、一次発酵(35℃、45分間)、成型(7cm角食パン型)、二次発酵(35℃、35分間)、焼成(190℃、18分間)を行いパンを調製した。焼成後のパンの高さ、比容積、色、水分量、かたさ、凝集性を測定した。また、混捏直後の生地の発酵試験を行った。【結果・考察】発酵試験の結果、β-グルカン量の変化による顕著な差は見られなかった。高さ、比容積はβ-グルカンの置換量増加に伴い減少したことから、β-グルカンがグルテンの形成を阻害し膨化を抑制したことが示唆された。硬さはβ-グルカンの置換量増加に伴って減少した。過去に行った実験では、β-グルカン含有量の多いもち麦品種を使用したパンは硬さが増加したことを認めたが(2023年度調理科学会にて報告)、本実験では異なる結果となった。このことから、もち麦パンの硬さ増加にはβ-グルカン以外の澱粉の組成や糊化温度、もち麦粉の粒子径などの影響が示唆された。

  • 中塚 康雄
    セッションID: 1A-7
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/06
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    【目的】 現状,パン用小麦の約90 %は輸入されている。食糧自給率の改善のためには小麦の輪作穀物である米,大麦,とうきび,大豆などを配合したパンの実需拡大が有効である。しかしこれらの非グルテン含有穀物は配合比率を高めるとパンの膨化性や嗜好性が劣ってくるため,配合割合の上限は15~20 %が実情である。本研究では非グルテン含有穀物粉の配合割合を30 %に拡大することを目的に,酵素処理後の多糖類添加が製パン性に及ぼす影響を検討した。

    【方法】 配合条件は強力粉70 %,穀物粉30 %,塩1.5 %,砂糖6 %,ごま油4 %,液種酵母8 %,水60-70 %とした。穀物粉は米(ミズホチカラ),大麦(キラリモチ),とうきび(コーングリッツ),失活全脂大豆を用いた。製パン工程は,最初に穀物粉だけを酵素処理(ヘミセルラーゼ,アマノ90,200 ppm,1 h)した。多糖類はドウミキシング開始前に同時添加した。多糖類としてアルギン酸エステル(PGA, キミカ),セルロースナノファイバ(日本製紙),シロキクラゲ(ユニテックフーズ),シトラスファイバ(鳥越製粉),マンナンペースト(サン食品),スピルリナ(DIC)の6種類を用い,対粉1 %を添加した。製パン試験方法は,前報(2023年度大会口頭発表,2A-2)に従い,2斤山型食パンを調製後,膨化率測定および簡易官能評価を行った。

    【結果】 多糖類添加前の酵素処理の影響は,穀物粉種類によって異なった膨化率を示し,酵素処理後のパンは甘味が増加した。多糖類の種類の影響としてPGAが高い膨化率を示したが,他5種類の膨化率改善効果はいずれも小さかった。多糖類の添加によって,パンの食感は硬くなる傾向があったが,許容できる範囲であった。

  • 高橋 雅子, 阿部 雅子, 森下 雄太, 岡田 早苗, 辻 聡, 村松 芳多子, 綾部 園子
    セッションID: 1A-8
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/06
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    【目的】「くろこ」は群馬県嬬恋村の伝統的な保存食品である。特産のじゃがいもをすりおろしてデンプン(片栗粉)を採取した後の残渣(以下くろこ原料)を半年間冬季の屋外で保蔵後、滓を分離し、洗浄・乾燥して製造する。これまで「くろこ」は経験的な製造法に頼られ成分などに不明な点が多い。そこで、本研究では「くろこ原料」から「くろこ」の製造過程中の成分変化を明らかにすることを目的とした。

    【方法】試料は、嬬恋村くろこ保存会が製造した片栗粉・一番くろこ・くろこ(二番くろこ)を用いた。また、2022年11月に保存会が製造した「くろこ原料」を嬬恋村で保蔵した嬬恋保蔵試料と、研究室で4℃保蔵した研究室保蔵試料を用いた。常法により一般成分(水分、たんぱく質、脂質、灰分、炭水化物)とデンプン(AA/AMG法)および食物繊維(酵素-重量法)を測定した。さらに、保蔵中の試料の温度も測定した。

    【結果・考察】「くろこ原料」の成分は、乾物換算でたんぱく質5%、灰分2%、炭水化物93%(うちデンプン72%、食物繊維20%)であった。「くろこ」の製造過程で得た「片栗粉」は、食品標準成分表の「じゃがいもでん粉」に近似していた。「くろこ」の成分は乾物換算で、炭水化物98%(うちデンプン92%、食物繊維5%)で、主成分はデンプンであった。24週間保蔵した「くろこ原料」から「くろこ」を分離した結果、嬬恋保蔵試料の収率は28%で、研究室保蔵試料は7%で保蔵条件による差があった。嬬恋の「くろこ」はデンプン89%、食物繊維6%で、一方「滓」は食物繊維が40%であったことから、「くろこ原料」に残存していたデンプンが保蔵中に分離しやすくなり「くろこ」が得られたことが示唆された。

  • 富岡 敏彦, 内藤 宙大, 和泉 秀彦
    セッションID: 1B-1
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/06
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    【目的】鶏卵とウズラ卵の交差抗原性を詳細に解析した研究はほとんどないが、鶏卵アレルギー患者はウズラ卵も食事から除去されている。そこで本研究では、鶏卵の主要アレルゲンであるオボムコイド(OM)に着目し、鶏卵OMとウズラ卵OMの交差抗原性を明らかにすることを目的とした。

    【方法】市販の鶏卵及びウズラ卵からOMを分離精製した。交差抗原性は、イムノブロット、阻害ELISA及び動物実験にて解析した。イムノブロットには、抗鶏卵OM ウサギIgG抗体を使用した。阻害ELISAには、固相抗原として鶏卵OM、一次抗体として鶏卵アレルギー患者血清中IgE抗体(n=7)を使用し、阻害抗原に鶏卵OM及びウズラ卵OMを用いた。動物実験には、鶏卵OMで感作させたBALB/cマウスを用いた。IgE抗体価の上昇を確認後、生鶏卵白、生ウズラ卵白、ゆでウズラ卵白(沸騰水中3分半)を経口投与し、直腸温及びアレルギースコアを評価した。

    【結果・考察】イムノブロットの結果、ウズラ卵OMはほとんど検出されなかった。阻害ELISAの結果、鶏卵OMの阻害率は阻害抗原濃度1 µg/mLで89.5±8.5%であったが、ウズラ卵OMでは26.1±12.0%と有意に低い値を示した(p < 0.01)。動物実験の結果、生鶏卵白群で経口投与30分後の直腸温の低下(-1.6℃)及びアレルギースコアの上昇がみられた。しかし、生及びゆでウズラ卵白群では、経口投与30分後の直腸温(-0.1及び-0.2℃)及びアレルギースコアは変化しなかった。以上の結果から、鶏卵OMとウズラ卵OMの交差抗原性は低く、鶏卵OM感作においてウズラ卵OMのアレルゲン性は低いことが明らかとなった。

  • 岩本 知子, 児玉 大介, 木村 守, 山本 紘義, 海老澤 元宏, 大関 塁, 柳田 紀之, 佐藤 さくら, 渡邊 天海, 寺田 拓実, ...
    セッションID: 1B-2
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/06
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    【目的】 食物アレルギーの原因物質の内、鶏卵は特に乳幼児期に多くみられ、その対応・解決は社会的課題となっている。鶏卵の主要なアレルゲンの内、オボムコイド(OVM)は、熱や消化酵素に対して非常に安定であるため、アレルゲン性を低減させることが困難であった。これまでに、広島大学との共同研究にて、ゲノム編集技術を活用してOVM遺伝子をノックアウトした鶏の作製に成功し、この鶏が産卵したOVMを含まない卵(アレルギー低減卵)を用いてスクランブルエッグ、茹卵、プリン、スポンジケーキなどのレシピで調理・製菓適性を確認している。本研究では卵アレルギーを持つ子供が好むお菓子のレシピ開発及びアレルゲン性評価を行った。

    【方法】 アレルギー低減卵との比較のため同鶏種の野生型の鶏が産卵した卵を用いて、クッキー、プリン、マドレーヌのレシピ開発と官能評価を行った。クッキーには茹で卵をペーストにして、フリーズドライ乾燥させた粉末を用いた。また、卵アレルギー患者の血清と試作品との反応性をELISAで確認し、アレルゲン性を評価した。

    【結果】 アレルギー低減卵も通常卵と同様にレシピを作ることができた。アレルギー低減卵は、通常卵と比較して卵白タンパク質濃度が高く、加熱凝固性が若干高いため、プリンは若干硬くなる傾向が確認された。アレルギー低減卵の茹で卵粉末を用いたクッキーと生卵を用いたプリンでは通常卵に比べてアレルゲン性が大きく低下した。アレルギー低減卵を用いたマドレーヌでは焼成条件によってアレルゲン性の低下に差があることが確認された。

  • 長野 隆男
    セッションID: 1B-3
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/06
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    【目的】ナノセルロースは、セルロースと比べて比表面積が大きい、高い粘性を示す、分散性、保水性が高いなどの優れた特徴がある。本研究では、湿式グラインダー(WG)処理おからとバクテリアセルロース(BC)が卵白ゲルの力学物性とゲルを形成する分子間力に与える効果について研究を行った。【方法】BCは発酵セルロース(三栄源エフ・エフ・アイ)を用い、おからのWG処理はスーパーマスコロイダー(増幸産業)を用いた。ゲルの圧縮試験には、テクスチャーアナライザー(Stable Micro Systems)を用いた。卵白ゲルを形成する分子間力の評価は、4種類の溶液(S1,S2,S3,S4)に溶出したタンパク質量をBradford法により求めることで行った。ここで、S1は0.6 M 塩化ナトリウム(NaCl)溶液、S2は0.6 M NaClと1.5 M 尿素溶液、S3は0.6 M NaClと8.0 M 尿素溶液、S4は0.6 M NaCl,8.0 M 尿素,0.5 M 2-メルカプトエタノール(2-ME)溶液とした。【結果・考察】WG処理おからまたはBCの濃度が高くなるに従って、ゲルの破断応力、破断歪、ヤング率は高くなり、弾性パラメーターnは低下した。WG処理おからまたはBCの濃度が高くなるに従って、ゲルからSS結合を切断するS4溶液に溶出したタンパク質の量が増加した。SS結合の形成を阻害する2-MEの濃度が高くなるに従って、ゲルの破断応力と破断歪は低下し、WG処理おからとBCの添加効果は小さくなった。以上の結果から、WG処理おからまたはBCの添加により、卵白ゲルの物性が向上することが示された。その理由として、ゲルを形成しているSS結合が関係していると考えられた。

  • -Eicosaplex PCR法を用いた薬剤耐性遺伝子の検出-
    石田 千津恵, 島本 敏, 島本 整
    セッションID: 1B-4
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/06
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    【目的】1980年頃から,抗生物質の不適切使用等を背景とする新たな薬剤耐性菌の出現が世界規模で問題となっている。多剤耐性菌の出現や食品の薬剤耐性菌汚染も報告され,ワンヘルスでの対策が求められている。特に野菜や魚介類は,生で喫食する機会が多く,ヒトの体内で新たな薬剤耐性菌の誕生につながる恐れもある。この伝播のリスクを明らかにすることを目的に,本研究では市販魚介類を対象として,薬剤耐性のグラム陰性細菌さらにビブリオ属細菌の分布を調査し,薬剤耐性遺伝子の検出を試みた。

    【方法】昨年報告した市販魚介類50サンプルから分離した各株(直接塗抹分離53株,増菌選択分離229株)を材料として,薬剤耐性遺伝子の検出を行った。薬剤耐性遺伝子の検出は,マルチプレックスPCRの一つであるEicosaplex PCR法を利用し,薬剤耐性菌が抗生物質に耐性を獲得する主なメカニズムであるβ-ラクタマーゼ遺伝子と,耐性遺伝子を他の細菌に水平伝播する可動性遺伝因子の一つであるインテグロンを同時に検出した。

    【結果・考察】直接塗抹分離株からは,CTX-M型基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)遺伝子(blaCTX-M)が7株(13.2%),クラス1インテグロン(int Ⅰ1)が1株(1.9%)より検出された。増菌培養後の選択分離株からは,blaCTX-Mが6株(2.6%),int Ⅰ1が9株(3.9%)より検出された。ESBLやカルバペネム耐性腸内細菌目細菌(CRE)に関連するプラスミド媒介AmpC β-ラクタマーゼ遺伝子は,直接塗抹分離から4株,選択分離から51株検出され,これらは今後Octaplex PCRを行って遺伝子の同定を進める。

  • 三井 詩織, 佐藤 瑶子
    セッションID: 1B-5
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/06
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    【目的】煮物や汁物の品質管理において、食塩濃度変化の把握は重要である。ハクサイは醤油を含む煮汁中で加熱すると断面の色が濃くなることが観察でき、醤油の色素成分は主に断面から拡散していると考えられるが、ハクサイの表面と断面の拡散の差異に関する報告はない。本研究はハクサイの食塩拡散過程のシミュレーションを目的に、計算に必要な拡散係数(D), 表面及び断面の物質移動係数(hs, hc)を測定した。

    【方法】ハクサイ(4 cm×4 cm)を5~80℃の0.2 M NaCl水溶液中に浸漬し、試料を外側5 mmとその内側に分けて食塩濃度を測定した(電位差滴定法)。食塩の拡散過程は三次元拡散方程式で解析し、実測値にフィッティングするように、Dとhs及びhcを有限要素法ベースのソフトウェアCOMSOL Multiphysicsを用いて算出した。ハクサイ(3 cm×3 cm)を沸騰した0.17 M (1%相当)NaCl水溶液で10分間加熱した後、65℃で2時間保温して、食塩水とハクサイの食塩濃度変化を測定し、前報1)に準じ、予測値と実測値を比較した。

    【結果】hcに比べてhsが約10-11倍と非常に小さく、食塩は主に断面からハクサイ中へ拡散することが明らかになった。D及びhsの温度依存性をアレニウスの式で表した。一方、hcは温度による一定の傾向は認められなかった。加熱中及び保温中のハクサイの食塩濃度変化は予測値と実測値で概ね一致し、温度変化を伴う調理時のハクサイ中の食塩拡散過程のシミュレーションが可能であることを確認した。

    1) Sato et al., Int. Gastoron. Food Sci., 24, 1-7, 2021

  • ―食塩、ショ糖が共存した場合―
    田中 里奈, 秋山 聡子, 池田 昌代, 鈴野 弘子
    セッションID: 1B-6
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/06
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    【目的】演者らはこれまでに、水煮において水の硬度が調理後の食品の状態に及ぼす影響を明らかにした。しかし、通常の調理では調味料を加えて行うことが多い。そこで、本研究では「煮物」を想定し、硬度の異なる水に、食塩、ショ糖を添加してだいこんを煮熟した際の物性および組織への影響を検討した。

    【方法】だいこん(千葉、青森県産)は直径1cm×高さ1cmに切裁した。煮熟水は純水、南アルプスの天然水(硬度:30mg/L)、エビアン(304mg/L)、コントレックス(1468mg/L)の調味料無添加と、それぞれ1%食塩、3%ショ糖、1%食塩+3%ショ糖を加えた合計16種とした。だいこんは煮熟水で10分間加熱した。加熱後の煮熟水はpHを測定し、だいこんは、クリープメーター(RE2-33005S)で破断強度、原子吸光光度法によりNa、K、Ca、Mg含有量を測定した。走査型電子顕微鏡(TM4000Plus)で組織を観察した。

    【結果】煮熟水のpHは、純水を除き、加熱後で有意に上昇した。加熱後のだいこんの破断応力は、水ごとに比較すると、無添加、ショ糖に比べ、食塩、食塩+ショ糖で有意に小さくなった。また、調味料ごとに比較すると、純水より、南アルプスの天然水、エビアンが有意に小さくなった。K含有量は、水ごとの比較で、無添加、ショ糖、食塩+ショ糖に比べて、食塩で有意に多くなった。CaとMg含有量は、調味料ごとの比較で、水に含まれているCaとMg量に比例して多くなった。また、Mg含有量は、水ごとに比較すると、ショ糖で多くなった。だいこんの構造は、表面部ではいずれの調味料の添加も水の硬度が高くなると細胞の丸みがなくなり、細胞壁が波打っている様子が観察された。

  • 吉川 美子, 水野 千恵
    セッションID: 1B-7
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/06
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    【目的】タマネギは長期保存が可能で、サラダ、煮物、炒め物、焼き物、揚げ物など様々な料理に使用される食品である。タマネギには抗酸化作用をもつケルセチンが含まれ、血圧低下作用や血中脂質改善作用等が期待される。ケルセチンは、外皮に最も多く含まれ、タマネギの部位により含有量に違いがあることが報告されているが、糖度や水分含有率の部位による違いは明らかではない。本研究では、タマネギの部位による糖度、水分、ケルセチン含有濃度の違いとオーブン加熱による成分変化を調べ、用途に応じた部位の活用、とくにケルセチンの効果的な摂取ができる調理法を検討する。

    【方法】試料は淡路産タマネギ(中生種:ターザン)を使用した。鱗葉部を横2分割(上部、下部)とし、それぞれを約5mm角に切断し、オーブン180℃で0分、3分、6分、9分、12分焼加熱した。水分は乾燥重量法、糖度(Brix)は屈折糖度計、糖組成はHPLC、ケルセチン含有濃度は、80%メタノールで24時間抽出し360nmの吸光度を測定する簡易評価法およびHPLCにより測定した。色は測色色差計によりL*a*b*表色系を用いて測定した。

    【結果と考察】生のタマネギは、下部の方が上部より糖度が高く、水分が低かった。ケルセチン含有濃度は上部の方が高くなった。オーブン加熱により、糖度(Brix)が時間経過とともに上昇したが、糖の重量に大きな変化はなかった。下部の方がシュクロースが高かった。ケルセチン含有濃度は加熱時間の経過ともに上昇した。色は加熱時間とともにL*値が低くb*値が高くなり、加熱12分では下部の方が加熱0分との色差ΔEが大きくなった。タマネギは下部で糖度が高かっためアミノカルボニル反応が上部に比べて進んだことによると考える。

  • 楊 淞壬, 飯島 陽子
    セッションID: 1B-8
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/06
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    【目的】キノコは新鮮なものほど、美味しいと言われ、保存中に風味が変化しやすい。しかし、鮮度の評価基準は定まっておらず、ヒトの主観評価によって判断している。本研究では、日本国内で食されているキノコに着目し、5種類のキノコ(エリンギ、エノキタケ、ブナシメジ、シイタケ、マイタケ)の保存による水溶性成分の変化について調べ、保存中に経時的に変化する成分を鮮度マーカー成分として見出すことを目的とした。

    【方法】スーパーで各種キノコを入手し、異なる保存条件(購入0日目、4℃保存7日、室温保存7日)で保存したものをサンプルとした。各サンプルを液体窒素で凍結し、粉状になるまで粉砕し、TMS誘導体化後、水溶性成分についてGC-MS分析を行い、成分定量を行った。得られたデータに対して主成分分析を行い、各キノコサンプルにおける成分の保存中の変動について検討し、変動が大きい成分を鮮度マーカー成分とした。また、代謝マップから代謝メカニズムを考察した。

    【結果】GC-MS分析結果、多くの成分がキノコ間で共通して検出された。主成分分析の結果により、いずれのキノコにおいても保存において水溶性成分の組成の変化がみられた。全てのサンプルから合計14種類のアミノ酸、4種類の有機酸、7種類の糖類を検出した。しかし、キノコによって保存中の成分の増減が異なっていた。例えば室温保存では、共通成分としてうまみに関するアミノ酸のグルタミン酸がシイタケ、エリンギ、ブナシメジ、エノキの保存では増加したが、マイタケでは減少する傾向が見られた。このような各種キノコの鮮度マーカー成分をまとめ、鮮度指標として利用できると考察した。

  • 香川 知美, 末原 憲一郎, 亀岡 孝治, 大引 伸昭, 湯川 徳之, 小山 鐘平, 橋本 篤
    セッションID: 1C-1
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/06
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    【目的】だしは日本料理に欠かせないものであり,料理に適しただしが求められるとともに,だしの特性に基づいた調理が重要となる。代表的なだしの一種である昆布だしに関しては,昆布の特徴とともに抽出に用いる水がだしを特徴付ける重要な因子となる。本研究では,昆布だしの抽出に用いる水の特性に着目し,昆布だしのうま味成分であるグルタミン酸濃度測定に加え,蛍光X線,紫外・可視,赤外分光情報に基づいた昆布だしの抽出挙動の把握を試みた。

    【方法】真昆布(北海道東戸井産1等級)および高度の異なる複数のミネラルウォーター(硬度:約30~300)を実験試料として用いた。ミネラルウォーター1 Lが入ったフリーザーバッグを低温調理器(BONIQ Pro,葉山社中)の水槽中で加熱し,設定温度(60℃)に到達した後,試料昆布30 gを投入した。抽出開始後,10分毎に60分までだしをサンプリングし,グルタミン酸濃度,蛍光X線スペクトル,紫外・可視吸収スペクトル,赤外吸収スペクトを測定した。

    【結果・考察】出汁の抽出成分含量および成分バランスに及ぼす抽出用水の硬度の顕著な影響は認められなかった。そこで,抽出に用いた水に含まれるイオン成分に着目し,硬度が同様でイオン成分の異なるミネラルウォーターを用いて抽出実験をおこなったところ,イオン成分の差異が抽出挙動に影響を及ぼしていることが実験的に認められた。また,だしの正規化マルチ分光情報に基づいた主成分分析の結果,抽出用水の陰イオンと陽イオンの種類や濃度比の差異が抽出挙動に大きな影響を与える可能性が示唆された。

    謝辞 本研究の一部は公益社団法人東洋食品研究所食品研究助成金の助成を受けたものです。

  • 森 勝哉, 小林 絢子, 上甲 孝志, 板井 紀康, 来島 壮
    セッションID: 1C-2
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/06
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    【目的】魚には栄養が豊富に含まれる一方,特有の生臭みがあり,下ごしらえの方法によっては,好まれない風味になる可能性がある。この下ごしらえに魚介だしを使用することで,魚料理に違和感なく使用でき,さらにうま味・風味などを与え,嗜好性を高めるものと考えた。そこで,本研究はサバを用いた調理において,かつおだしを含む4種類のだしを用いた下ごしらえを行い,食味におよぼすだしの影響を官能評価により調査した。

    【方法】サバの調理は,塩分を調整しただし液に浸漬し,塩焼きすることとした。かつお荒節・昆布・煮干し・焼きあごの3.4%だしを準備し,食塩を加えて塩分濃度2%としたものを浸漬液とした。対照として,だしを含まない2%食塩水を準備した。サバは皮つきの切り身とし,各浸漬液に4℃,2時間浸漬した後に焼成した。官能評価は,Check-All-That-Apply(CATA)法により風味を評価し,線尺度法によってその嗜好性を評価した。いずれの評価もパネル16名で実施した。その結果を統計処理し,プリファレンスマッピングを実施した。

    【結果】CATAデータをコレスポンデンス分析に供して得られた結果に,嗜好データを結合し,プリファレンスマッピングを実施した。ここでは嗜好パネルが3グループに分かれた。かつおだしのように,生臭みが感じにくく,厚みがあり,風味矯正されたものが好まれるグループがみとめられた一方で,煮干しのだしを好むパネルも一定数存在した。現在,嗜好性の決定因子について調査中である。

  • ー 野菜廃棄部位との組み合わせ ー
    上薗 薫, 水野 すみれ, 建路 七織, 綿貫 仁美, 小野寺 志織
    セッションID: 1C-3
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/06
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    【目的】

    現在、農林水産省は鳥獣被害対策として有害鳥獣を捕獲するだけでなく、ジビエとしての利用を推進しているが、その活用は発展途上段階で、害獣駆除後、廃棄される割合が高い。本研究では捕獲数が多いシカに着目し、加えて廃棄されることが多く、活用販路が検討されている骨からだしをとるジビエスープの活用を目的とし、使用する他食材も廃棄されがちな部位を使用した。

    【方法】

    シカ骨スープには国産ジビエ認証制度取得施設で処理をされたシカ(日本鹿・オス・約6歳・長野県富士見町立沢捕獲・個体番号:1032306054)の骨を使用した。比較対照に用いた牛骨豚骨スープは冷凍の国産牛骨、国産豚骨とした。臭み除去目的で使用した野菜廃棄部位は、トウモロコシ(皮と芯)ゴボウ(葉)、タマネギ(皮のみ、皮と根)、ニンジン(皮)などを用いた。牛骨や豚骨スープとの合わせスープの食味も確認と併せて、シカ骨スープの味噌汁、ラーメン、リゾットなどへの活用検討も行った。

    【結果】

    シカ骨と野菜廃棄部位を活用した全スープにおいて、ジビエ特有の臭みが消えて飲みやすいスープとなった。タマネギ(皮のみ、皮と根)との組み合わせでは、後味に苦みが残るスープとなったが、各スープともに見た目や匂い、味に違いはあるものの活用の可能性が見出せた。牛骨と豚骨スープと合わせたシカ骨スープの検討結果は、豚骨と牛骨スープいれずとも味が調和せず、シカ骨スープは単体使用が良いと判断している。調理品への活用においては、トウモロコシとニンジンの廃棄部位と組み合わせた調製スープは甘味が強く、旨味との相乗作用も認められた。本研究で検討したシカ骨スープは多くの料理に活用でき、ジビエ料理の拡充にも繋がると考えている。

  • 井上 日都美, 大森 麻衣, 岩見 理穂, 田村 佳子, 飯島 陽子
    セッションID: 1C-4
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/06
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    【目的】ゴマは焙煎によって香ばしく好ましい香りになるが、焙煎中に香ばしい風味から焦げ感へ急激に変化する。そこで、ゴマの香ばしい風味と焦げ感の違いに寄与する成分の探索を行い、ゴマおよびゴマ調理品での変化を機器分析と官能評価により明らかにすることを目的とした。

    【方法】ゴマを焙煎器(260℃)で9分(浅煎り)、12分(適度な焙煎)、15分(過焙煎)焙煎した。各焙煎ゴマからSAFE法で香気成分を抽出し、これをGC/MS-Olfactometry(GC/MS-O)にて分析し、AEDA法で香気寄与成分の探索を行った。ゴマ調理品としてドレッシングを想定し、ドレッシングベース(油あり/なし)に粉砕した各焙煎ゴマを10%添加、混合した。その香気成分をHS-SPME-GC/MSで分析した。また、各焙煎粉砕ゴマを用いたドレッシングについて、VAS法により官能評価を行なった。

    【結果・考察】GC/MS-Oでは、各焙煎ゴマのGC上7箇所でFDファクター1024のにおいが検出された。焙煎後12分、15分では、検出成分に違いは見られず、好ましい香ばしさと焦げ感は成分量の違いによることが考えられた。ドレッシングのGC/MS分析では、ゴマ単体の場合の香気組成の変化と同様の傾向が見られた。また、ドレッシングの油の有無では多くの化合物で同等、または油なしの方がリリース量がやや多い傾向を示した。ドレッシングの官能評価の結果から、ゴマ単体では焙煎12分が好まれたが、ドレッシングでは15分が好まれ、ドレッシングではゴマ単体時と比べゴマの風味がダイレクトに感じにくくなり、ゴマの風味が弱く感じられるため、焦げ感が強い方が味がはっきりして好まれる可能性が考えられた。

  • 伊藤 歩美, 吉川 倹太郎, 田村 翔平, 吉田 匡, 徳田 慎也, 石川 伸一
    セッションID: 1C-5
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/06
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    【目的】煮物の研究において、煮物中の食塩総量を測る研究はよく行われている。しかし、煮物の塩分の分布などについて調べた研究は少ない。本研究では、塩分濃度や保存期間を変えた煮物中の塩分分布の違いを調べ、塩分量は同じであるがその分布が異なる煮物の官能特性について検討を行った。

    【方法】煮物の試料は、2.5cm角のじゃがいもとだいこんとした。塩分濃度0.9%、1.5%、2.7%の煮汁とそれぞれの試料を加熱調理した。加熱後の試料は、冷却を行い、0、1、2、3日間保存後、各種測定を行った。煮物への塩分の浸透は、煮物試料の全体と表面部および内部の塩分濃度をそれぞれ測定した。同程度の塩分濃度である、①塩分濃度1.5%・1日保存、②塩分濃度2.7%・0日保存の試料を用いて、塩味の強さについて分析型官能評価を行った。

    【結果・考察】じゃがいも、だいこんともに、試料全体の塩分濃度は、0日から1日保存にかけて有意な増加が見られた。0日保存の試料では、表面部の塩分濃度が内部と比較して有意に高く、塩分が表面によりとどまっていることが示された。その後、1日保存の試料では、表面部と内部の塩分濃度が同程度になり、塩分が内部まで浸透していることが明らかとなった。官能評価の結果、だいこんにおいて、塩分が内部まで浸透している①の試料に比べて、塩分が表面にとどまっている②の試料において、塩味を有意に強く感じることが明らかとなった。これらの結果から、煮物の塩分濃度が同じであっても、塩分の分布が表面にとどまっている試料の塩味を強く感じるため、食塩分布を変えることによって減塩の可能性が示唆された。

  • 外岡 和菜, 石川 伸一
    セッションID: 1C-6
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/06
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】 現代では食の外部化や調理の簡便化志向が高まり、調理の機会や時間は減少傾向にある。調理習慣・能力の維持はヒトの心身の健康に重要であり、調理を行う動機となる新たな調理の意義を示すことが必要である。先行研究では料理を自分で作った場合に、嗜好性や風味が向上したとの報告がある。そこで本研究では、人が料理を作ったという情報がその料理への評価に及ぼす影響を調べることを目的とし、新たな調理することの意義を示すことを目指した。

    【方法】 Study1では調理過程に関わる情報の影響を調査した。同一の料理写真(味噌汁)に対して「表記なし」、「機械で作ったもの」、「人の手で作ったもの」の3パターンのラベルを付与し、クラウドソーシングソーシングサービスで募集した被験者に対して、料理の見た目・健康感、予想されるおいしさ・塩味の強さ、摂食意向、作るのにかかる手間と時間、made with loveの項目についてアンケ―ト調査を行った。Study2では調理時の人の存在の影響について調査した。料理(味噌汁)のレシピについて、「文字のみ」、「文字+調理中の写真(人の存在なし)」、「文字+調理中の写真(人の存在あり)」の3パターンに分け、レシピを見た後に完成料理について、Study1同様のアンケ―ト調査を実施した。

    【結果・考察】 Study1では料理の見た目、健康感、予想されるおいしさ、摂食意向、手間と時間、made with loveにおいて、「機械で作ったもの」とラベルした群が、他のラベルの群と比べて有意に低い点数となった。機械で作ったという情報が料理の印象に対して負の影響を及ぼすことが示唆された。Study2については解析中である。

  • 曽矢 麻理子, 小林 三智子
    セッションID: 1C-7
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/06
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】近年、生体の味認識メカニズムを模倣した味覚センサーを使用して味を数値化する研究が盛んに行われている。非イオン性物質である糖類の測定にはGL1センサーを用いるが、イオン性物質を測定する他のセンサーと反応のメカニズムが異なるため、特異的な応答が見られないことがある。その原因の一つに試料の調整方法が考えられるが、研究報告は少ない。そこで本研究では、にんじんを用いて試料の調整方法の違いによるGL1センサーの応答性を検証することを目的とした。

    【方法】加熱温度の異なるにんじん(すりおろし生、加熱ピューレ3種;120℃・140℃・160℃)を試料とした。各試料はHPLCにて糖含有量を測定後、下記の通りに調整した。①試料を5倍に希釈し、ミキサーで撹拌後、遠心分離した上清、②①をPVPP処理(渋味物質の除去)、③①の希釈倍率を2倍に調整、④①の希釈倍率を3倍に調整、⑤①の上清を超音波処理、⑥①をミキサー撹拌後超音波処理し、遠心分離した上清。これらの試料について味認識装置を用いてGL1センサーによる測定(測定回数5回、室温)を行った。

    【結果・考察】①~⑤までの方法では、糖含有量の少ないすりおろし生への反応が最も高く、糖含有量の多い加熱ピューレに対しては糖濃度と同等の反応は見られず、すりおろし生よりも低い反応となった。⑥ではいずれも糖濃度と同等の反応が見られたため、加熱ピューレでは、超音波処理工程を加えることで糖が溶液中に遊離し、GL1センサーへの反応が得られることが分かった。また、にんじんの渋味物質によるGL1センサーへの影響はなく、希釈倍率も5倍で妥当であると示唆された。

  • 下藤 悟, 甫木 嘉朗, 土居 睦卓, 加藤 麗奈, 森山 洋憲
    セッションID: 1C-8
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/06
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】食品のおいしさを捉える方法として、回帰分析によって官能評価結果を分析値で説明する手法がある。しかし未知の試料に対して回帰モデルを当てはめると誤差が生じる。この誤差が生じる原因を判別し対処することがおいしさをより正確に捉えるための課題と考えている。今回、清酒についての官能評価結果を解析したところ、誤差が大きい試料の特徴を整理できたので、その手順と結果を報告する。【方法】試料は清酒466品を用いた。官能評価は専門員1人の評価結果を用いた。項目は総合評価、香り・吟醸香以外の香り・甘味・酸味の強さ、辛口―甘口・淡麗―濃醇の程度の7項目とした。また自由記述形式で特徴を表すコメントを収集した。説明変数には清酒の品質を表す一般的な分析値(12項目)を用いた。さらに特徴量生成により説明変数を補完した。回帰分析にはランダムフォレストを適用した。396品で回帰モデルを作成し、残りの70品で予測精度の検証を行った。予測精度はMAEとadjR2を指標とした。最終的に得られた予測値と実測値についてクラスター分析を行い、誤差の大きい試料の特徴に関してコメントの解析を行った。【結果・考察】予測精度の平均はMAE 10.98, adjR2 0.50であった。予測精度の低下の要因となる誤差の大きな試料は特定の評点の間に集中しているといった傾向が確認できた。これらの試料をクラスター分析により分類し、コメントに表された特徴を集計したところ、丸い、キレイ、甘味強い、酸味強い、渋い、欠点香がある、コゲ臭、後味が悪いといった用語が抽出された。予測精度の向上にはこれらの特徴を捉えた分析値を補うことが重要であると示唆された。

  • 湊 敏文
    セッションID: 1D-1
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/06
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    【目的】本研究は時代を経る中で、伝えられていない料理や技術があると考えられる中で、お節料理のイメージが強い「おがわ」を取り上げた。魚肉を酢で固めてしまう「おがわ」の調理工程から発展性を考えてみた。【方法・試作】基本材料:紋甲烏賊500g 酢240㏄ 砂糖100gを基本の食材とし、米酢 リンゴ酢 赤・白ワインビネガーの4種類の合わせ酢を用意。基本調理:烏賊のすり身を作る。フードプロセッサーとすり鉢を使用。すり身を、塩・酒で塩味と固さを調整する。ラップの上に薄く伸ばす(巻き寿司の酢飯のように)そのまま丸めてもよい。またほかの食材を芯にして巻き上げる。巻きあがった物を、そのまま合わせ酢に漬けこむのが基本調理。時間経過による観察をした。【結果・考察】すり身のみを浸漬した場合の時間による浸透。3時間では表面から1㎜程度、酢で締まった状態。10時間以上浸漬してようやく酢締めの状態になる。酢の種類による違いは、米酢は特徴のない味に仕上がるが、リンゴ酢はややすっきりした味になる。ビネガーは赤・白共にフルーティーに仕上がり食べやすいと感じる人もいると考えられる。また酢味なので発酵食品にも合わすと複雑な味にもなる。チーズなどを合わすことにより西洋料理に取り入れる事も出来る。すり身を使用する事で様々な形にできる。技法的には特に難しい技術は無く、使用する酢によって合わせ酢をどのような割合で合わせるかで味が決まる。「おがわ」と言う浸漬調理技法が現代でも充分に使用するのに価値がある技法と言えるのではないか。食材の無駄を無くすことでSDG’sにも繋がる。温故知新、昔を調べ現代人に合わせれば新鮮に映るのではないか。

  • ーご飯、マグロの構造観察ー
    藤村 洋
    セッションID: 1D-2
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/06
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    【目的】今年4月から運用が開始された次世代放射光施設ナノテラスの有効利用に向けて、弊社ではこれまで国内既存放射光施設を利用してきた。「食品のおいしさの可視化」を目的とし放射光X線CTで食品の内部構造の違いや変化の様子を測定してきたが、今回は「米飯粒の内部構造」と「マグロの解凍過程」を非破壊で測定した結果がおいしさとどう相関があるか報告する。

    【方法】かまどご飯、IH炊飯器、圧力IH炊飯器、パックご飯の各炊飯方法で炊いた米飯粒を測定し、構造をテクスチャーや食味試験の結果と比較した。位相CTによる生の米飯粒の内部構造測定も行った。また、様々な手法で解凍させたマグロの組織や「解凍」過程を放射光X線CTで測定しドリップ量や食味との相関をはかった。

    【結果・考察】かまどで炊いたご飯粒には米胚乳細胞の間に亀裂が顕著にみられた。この構造は炊飯器では見られなかった構造であり、かまどご飯の食感に影響を与えていると考えられる。実際、かまどご飯の炊き方を模した炊飯方法ではかまどご飯に見られた亀裂上の組織が存在し、食感も近いことが確認された。一方、マグロの解凍過程の観察では筋組織内で分離した氷結晶が組織内で戻る復水や、ドリップが出る過程も観察された。食品の構造とおいしさにはある程度の相関があり、おいしさを評価する上で放射光X線CTは非常に有効なツールであった。

  • —消費者調査による検証—
    好村 和歌子, 川﨑 寛也, 三宅 裕子
    セッションID: 1D-3
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/06
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    【目的】肉体的にも精神的にも社会的にもすべてが満たされた状態にあることを指すウェルビーイングは,経済的豊かさの指標である国内総生産GDPに代わって人々の幸福度を示す指標として用いられる機会が増えたことで,近年注目が高まっている。ウェルビーイングの主要5要因は,人間関係・身体健康・仕事・経済状況・地域社会であり,人々の多様なライフスタイル実現と密接な関係があり,食生活もその一端を担う。本研究は,食生活のうち食品の選択や食に対する価値観を含む食事づくり全体を「調理」と定義し,消費者における調理意識がウェルビーイングに果たす役割を検証することを目的とした。

    【方法】消費者対象(N=1500)にオンライン調査を実施し,普段の生活における調理意識およびその他の生活意識(経済状況・身体健康・人間関係・地域社会との関わり・余暇レジャー)と,主観的ウェルビーイング度を評点法により聴取した。まず,主観的ウェルビーイング度と調理意識の関係性を示すため各評点との相関係数を算出した。次に,調理意識を因子分析し主観的ウェルビーイング度との因果関係を重回帰分析により求めた。

    【結果と考察】調理意識は経済状況・身体健康意識などと同様に主観的ウェルビーイング度と相関した。さらに,調理意識のうち,主観的ウェルビーイング度を高めるのは「調理好き・楽しさ」,「情報志向」,「家族志向」であった。また,「省力志向」は主観的ウェルビーイング度に負に影響し,「調理スキル・上手さ」は主観的ウェルビーイング度に影響しないことが明らかになった。以上より,生活者のウェルビーイング実現には,調理が楽しいと感じられる体験の促進が重要な役割を果たすことが示唆された。

  • ―生活者の実態調査に基づくレシピ提示のあり方―
    上田 愛佳, 森 卓, 辻 美保子, 川﨑 寛也
    セッションID: 1D-4
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/06
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    【目的】ウェルビーイング度に相関する要素として、仕事、人間関係、経済状況、余暇レジャーなどが示唆されているが、味の素社としては調理体験に着目している。より多くの人に調理をしていただくための一策として、レシピに着目し、使いやすいレシピ提示を通して、調理における負担の軽減と楽しい調理体験の実現を目指すこととした。そこで、よりよい調理体験の提供につながるレシピ提示のあり方を探ることを目的とし、レシピ閲覧における実態調査を行った。

    【方法】月1回以上レシピを見ながら調理をする生活者1000人を対象に、オンライン調査を実施した。レシピ閲覧のタイミングとタイミングごとの取得情報、利用しているレシピ媒体とその媒体を活用しながら調理することにおけるメリット/デメリット、調理時に失敗しやすい工程、よりよい調理体験のために必要な支援を評点法により聴取した。得られた結果を集計し、利用しているレシピ媒体に関するコメントはテキストマイニング解析を行った。さらに、調理時の失敗工程と求められるサポートの関連性を調べるため、コレスポンデンス解析を行った。【結果と考察】新しいレシピを知る・献立を考える・食材を購入する・調理準備をする・調理するといったレシピを閲覧するタイミングによって、レシピから得たい情報が異なっていた。また、初心者や上級者は動画中心のレシピを好む一方で、中級者は写真や文字情報中心のレシピを好む傾向があり、調理スキルによってもレシピに求める情報が異なることが推測された。以上より、レシピを閲覧するタイミングや閲覧する人の調理スキルに合わせてレシピの内容やその提示方法を変えることで、調理のウェルビーイング向上に寄与できる可能性が示唆された。

  • ―動画から調理行動を自動計測する試み―
    森 卓, 小野 信和, 川﨑 寛也, 数藤 恭子
    セッションID: 1D-5
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/06
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    【目的】誰にでも美味しく調理できる食品・調味料を開発するには,潜在的な生活者の調理行動を観察し,良い/悪い出来上がりにつながる原因を調査する必要がある。しかし、行動観察調査は、一般的に調査に時間がかかり件数が少なくなりがちであることが課題となる。より多数の行動観察調査を素早く行い,生活者の調理実態により即した商品開発を実現するため,台所の壁などに固定したスマートホンから撮影された画像を対象として,調理行動を推定する技術を構築することを目的とする。

    【方法】調理動画像を対象とし、調理器具を認識できるように学習させた物体認識AIおよび、人物の体の関節点を推定する姿勢推定AIとを用い、それぞれの出力を組み合わせて調理行動(切る、炒める、など)を推定するシステムを構築した。本システムを用い、特定の調味料を用いて調理する様子を撮影した動画を解析した。

    【結果】一般生活者である20~60代の女性68名がCookDo(R)回鍋肉用を用いて調理をする様子を撮影した動画を解析した結果、1)パッケージに記載されている調理ディレクション通り野菜を半量ずつ2回に分けて炒めている人と、1回にまとめて炒めている人がいること、2)2回に分けて炒めている人と1回にまとめて炒めている人とで炒める際にかかる時間や作業量は変わらないこと、3)いずれの場合も、開発者が想定していた時間よりも長く炒めていること、が分かった。また、調理動画をもとに調理中の行動を定量化できたことにより、対象者の中から特徴的な行動を捉えている人を抽出できることを確認した。

  • 今井 啓, 古山 祐貴, 倉持 幸司, 山本 隆彦
    セッションID: 1D-6
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/06
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    【目的】誘電型加温を用いた低温調理は食材に直接電流を流して加熱するため、湯煎を用いる従来の低温調理法に比較して加熱の都度大量の水を必要とせず、またその水を長時間温め続けるだけの電力を必要としないといった利点がある。一方で、誘電型加温を用いた低温調理の食味に及ぼす影響について明らかになっていない。本研究では、加熱によるドリップ量の観点から測定を行い、従来の低温調理法との比較を行った。

    【方法】加熱試料には低温調理に用いる食材の一例として,広く入手容易な鶏むね肉を用い,2枚の銅板電極間に挿入して平行平板コンデンサを形成した。電極間に周波数700~900 kHz, 振幅72 Vの交流電圧をくわえ,加熱試料に流れる電流と試料の抵抗成分との抵抗損失によって加熱した。加熱温度を56 ℃とし、入力電圧の周波数を変化させ温度調節を行った。試料寸法は50×40×10 mmとし、試料に直接光ファイバ温度計を差し込むことで加熱中の試料の内部温度を測定した。加熱前の試料重量と加熱後の重量を、ペーパータオル上で軽く裏表面を返した後測定し,加熱前後の重量差から加熱前の試料重量に対する百分率でドリップ量を算出した。

    【結果】2 hの加熱の結果、誘電型加温法と従来法でそれぞれ13.9 %, 13.5 %のドリップが確認された。また1 hの加熱では誘電型加温法で13.9 %, 従来法で11.9 %,0.5 hの加熱では誘電型加温法で9.2 %, 従来法で9.7 %の重量の低下を確認した。誘電型加温法と従来法とでドリップ量の大きな差異はないことから、保水性の観点では、加熱に電流を用いる誘電型加温法で従来の低温調理法と同程度の食味が得られると考えられる。

  • 辰口 直子
    セッションID: 1D-7
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/06
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    【目的】焼き加熱における調理への蒸気の影響が大きいことはスチームコンベクションオーブンの先行研究で明らかになっている。オーブントースターに水を入れて加熱することが奨励されたり、スチーム使用の製品も販売されているが、オーブントースターでの水蒸気の影響に関する研究は数少ない。そこでオーブントースターの焼き調理における水蒸気の影響について明らかにすることを目的とした。

    【方法】試料には市販の6枚切りの食パン(P社)を用いた。加熱には市販のオーブントースター(Bistro NT-D700-K) (Panasonic社)を使用した。加熱設定温度は予備実験の結果、200℃、220℃とし、シャーレに入れた水を置く方法で行った。水量は直径7cmのシャーレを用い、なし(0mL)・30mL・90mLの条件とした。シャーレをオーブントースター内に置き、庫内温度が設定温度になるまで3分加熱した条件(予熱あり)と、予熱なしの条件を用いた。試料を入れてからの加熱時間は3分とした。測定項目は庫内中心温度、食パン中心温度、食パンの重量変化、表面の焼き色(色差:L,a,b値)、クラスト層の厚さ、庫内水量の重量変化の測定を行い、官能検査を行った。

    【結果】食パンの焼き色は予熱ありの場合、水量が増えると焼き色が濃く、L値は0ml、30mlと90mlの間で有意差が認められた。一方、予熱なしの場合は、水量が増えると焼き色が薄く、0mlと90mlの間で有意差が認められた。重量変化は設定温度220℃のみで有意差が見られ、予熱ありでは、水量が多いと重量変化が高く、予熱なしでは水量が多いと重量変化が低かった。蒸気の有無が、焼き色や重量変化に影響を与えることが明らかになった。

  • 能登 美尋, 安達 向日葵, 徐 知希, 佐藤 瑶子
    セッションID: 1D-8
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/06
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    【目的】スチームコンベクションオーブン(以下スチコン)は、食材に油を塗布して加熱することでノンフライ調理品の製造が可能である。本研究ではスチコンによるノンフライ調理品の加熱時間の設定を目的に、ジャガイモの内部温度変化をシミュレーションするモデルを構築した。【方法】庫内空気からの対流伝熱とホテルパンからの伝導伝熱を考慮した伝熱解析モデルを作成した。サラダ油を塗布したジャガイモ(直径2.8 cm,高さ3 cm)をスチコン(TSC-10GB,タニコー、CSX-G101, コメットカトウ)で180℃~220℃、蒸気量0%で加熱し、中心温度の実測値と予測値を比較した。対流熱伝達率は、アルミニウム円柱(直径3 cm高さ3 cm)加熱時の温度の実測値にフィッテイングするよう算出した。次にジャガイモ(1.5 cm×1.5 cm×4 cm)の200℃加熱時の硬さの変化を測定した(テクスチャーアナライザー)。最後に市販品を参考に種々の形状のジャガイモの加熱時間を比較した。計算には有限要素法ベースのシミュレーションソフトウェアCOMSOL Multiphysicsを用いて行った。【結果】加熱温度および使用するスチコンが異なる条件での試料内部温度の実測値と予測値は概ね一致し、ジャガイモの内部温度変化のシミュレーションが可能であることを確認した。試料中心温度の予測値が98℃付近で適度な硬さになった。中心温度が98℃になるまでの加熱時間は三日月形(長軸6 cm短軸5 cm楕円体の1/12)で3.5分であり、同一形状では加熱温度によらずほぼ同じであった。今回検討した条件の範囲では、加熱時間の差は加熱温度間よりも試料形状間の方が大きかった。

  • -さつまいも餡の色,光沢,テクスチャー特性に裏ごし操作が及ぼす影響 -
    高木 萌衣, 宇田川 心優, 山崎 真優, 杉山 寿美
    セッションID: 1E-1P-k22
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/06
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    【目的】さつまいもを加熱後、裏ごしして練り上げた“さつまいも餡(きんとん)”は、豆から調製した餡とは異なるテクスチャーを有している。しかし近年、裏ごしを行わず、フードプロセッサー等で粉砕することが多くなっている。そこで、本研究ではさつまいも餡の性状に及ぼす裏ごし操作の影響を検討した。

    【方法】さつまいも(鳴門金時)は、蒸し加熱後,裏こし器、マッシャー、フードプロセッサーで細粉化し、その200gに砂糖および水を加えて12分間で300gに練り上げた(水分量59%)。調製したさつまいも餡の色を色彩色差計(コニカミノルタ)、光沢をハンディ型光沢計(日本電色)、粒子径を粒度分布計(堀場)で測定した。テクスチャー特性はテクスチャーアナライザ(島津,EZ test)を用いて硬さ、付着性等を測定するとともに、水を重層した条件でも行った。レオロジー特性は動的粘弾性装置(HAAKE,レオストレス 6000)で、応力依存性,周波数依存性を測定した。官能評価は、外観およびテクスチャーの好ましさを評価した。

    【結果】裏こし試料では光沢度が低い明るい黄色,フードプロセッサー試料では光沢度が高い灰色がかった黄色であった。また、フードプロセッサー試料の粒子径は小さく、テクスチャー測定では付着性が大きく、水を重層した測定では軟らかく、付着性が小さかった。レオロジー測定ではフードプロセッサー試料で線形領域が狭かった。官能評価の結果、裏こし試料が総合的に好ましいとされ、フードプロセッサー試料はつやがあり、なめらかと評価された。これらから、フードプロセッサーでの粉砕により餡粒子から流出したでんぷんが裏こし試料と性状の異なるさつまいも餡の性状にしていると考えられた。

  • ―真空調理法を用いた米飯の調理特性―
    常田 妃奈乃, 小﨑 智恵, 藤井 恵子
    セッションID: 1E-2P-k19
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/06
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    【目的】熱伝導率がよく、保存性が高く個別対応が可能な真空調理に着目し、真空調理を用いた米飯の調理特性を明らかにすることを目的とした。さらに、米の品種の多様性に対応するために、アミロース含量の異なる米についての調理特性の検討も行った。

    【方法】精白米200 gを洗米加水後、真空包装(25×35 cmの真空包装用フィルム)をし、浸漬したのち沸騰した湯浴中で20分間加熱した。なお、浸漬時間は20分、30分、60分とした。さらに、電源を切った湯浴中で10分、20分、30分の余熱調理を行った。試料米はコシヒカリのほか、低アミロース米としてミルキークイーン、高アミロース米として夢十色を使用した。米飯の静的粘弾性、破断特性、テクスチャー特性を測定し、X線回折装置を用いて老化特性を明らかにした。

    【結果】炊飯当日の米飯について浸漬条件の影響については、外観や力学特性に有意な差は認められず、また老化の進行程度にも違いは認められなかった。 沸騰加熱後の余熱時間の影響については、テクスチャー特性の硬さの結果から、余熱時間が長いほど高値を示し硬くかみごたえのある米飯になる傾向がみられたが有意な差は認められず、余熱時間は米飯の硬さに顕著な影響を与えなかった。アミロース含量の異なる品種米の検討では、破断特性の結果から、破断荷重はアミロース含量が高い米飯ほど有意に高値を示し、硬くなった。テクスチャー特性については、成型法では高アミロース米の夢十色の米飯塊は最も硬く、もろく、凝集性及び付着性は低い傾向が示され、通常の調理法と同様の結果であった。老化特性の結果より、低アミロース米のミルキークイーンは、コシヒカリ・夢十色よりも老化の進行が遅いことが示された。

  • 河野 俊夫
    セッションID: 1E-3
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/06
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    【目的】世界人口の推計から考えるタンパク源の確保に黄色信号が灯る現在、従来の畜産・水産物に代わる様々なタンパク源が検討されている。その一つに食用昆虫がある。むろん食品としての摂取安全性の確認や既存農業生産とのバランスの問題などクリアすべき実務的課題もあるが、本研究ではそうした課題の解決後を前提に、食用昆虫を大量処理する際に必要な乾燥特性を分析するとともに、その調味料の素材に適用する際の基礎データとして、調味液への添加による粘度変化や水分散性ついて研究した。

    【方法】4種の食用昆虫(コオロギ、カイコ、イナゴ、ミールワーム)について、乾燥温度範囲60℃~120℃での乾燥特性を測定した。得た乾燥定数などを利用して、有限要素法による乾燥シミュレーションを行った。また、乾燥中の食用昆虫の波長800nm~2,500nm範囲での近赤外反射スペクトルを測定した。水への分散性を、紫外可視分光光度計を利用して測定したほか、醤油、みりん、砂糖で構成する調味液へ食用昆虫粉末を添加した場合の粘度変化を計測した。

    【結果】食用昆虫の乾燥特性は、減率乾燥期間において上に凸の特徴的な乾燥速度特性を示した。乾燥定数と乾燥温度との関係はArrhenius型の式に適合した。有限要素法による乾燥シミュレーションの結果、食用昆虫の乾燥モデルは減率乾燥第一段モデルで十分であることが示された。主成分分析の結果、乾燥中の食用昆虫の熱変性を知る波長域の存在が示唆された。水分散試験の結果、コオロギおよびイナゴは水によくなじむことが明らかとなった。粘度変化計測の結果、イナゴやミールワームでは平均的に10%程度粘度が大きくなることが分かった。

  • 大西 弘太郎, 久保木 陽子, 源川 博久
    セッションID: 1E-4
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/06
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    【目的】のり弁当は、昭和30年代当時、家庭に広まっていた「のりおかか弁当」から派生したといわれている。白ごはんの上に、かつおぶしを載せ、しょうゆをまぶした弁当であった。学校給食が無い時代は児童生徒らが昼食に摂っていた。1976年に、ほっかほっか亭第1号店が出店される際にそれを改変した「のり弁当」が発売された。当初は「焼き魚(ホキのみそ漬け)」が具材として用いられていたが、その後、冷凍の白身魚フライへと変更された。しばらくして、ちくわ天が追加されることとなった。本研究では、「美味しさ」,「食品ロス」という2つの点に着目して食材,調理,食味等について調査し、のり弁当の本質を洞察し、それを規定する因子について解析を行ったので報告する。【方法】弁当チェーン店,テイクアウト可能な料理店,レシピ各種をインターネットや書籍等から抽出し、情報を収集した。それぞれの食材,調理,食味,地域性や時代背景などについても考察を試みた。【結果】食材として、ご飯,かつおぶし,海苔,醤油は共通していた。具材としては白身魚(フライが多い),ちくわ(天ぷらが多い)が多い。具材には、海産物が多い。これは、味や香りの組み合わせとして海苔に合う物が用いられていることが推察された。ご飯と昆布(佃煮が多い)の組み合わせも多い。海苔も含めて海産物の調和が統一感をもたらしている。きんぴらごぼう,卵焼き,鶏の唐揚,しば漬けなどが用いられていることもしばしば見受けられる。調味料については、出汁醤油,みりん,タルタルソースなど、詳細が不明なものも多い。今後は、家庭料理の弁当等と比較検討した上で、のり弁当の魅力を規定する因子の解析を進めていく予定である。

  • 針谷 夏代, 望月 和樹, 平山 訓子, 有井 美咲, 河角 彩加, 宮本 和子
    セッションID: 1E-5
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/06
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    【目的】カンボジアでは米を主食とし、肉や魚を使った主菜と野菜の入ったサラダやスープが食されている。屋台飲食が盛んで、頻繁に外食する習慣が定着している。朝食には肉類や野菜が入った粥や米粉麺が主流である。経済発展により農村部と都市部で貧富の差が拡大し、富裕層では過栄養、貧困層では低栄養を健康問題として抱えている。農村部では識字率の低さや言語の壁から食事記録法や食事歴法による食事調査が困難であることから陰善法が適していると考えられるものの、現地で食品分析を行うことが困難であることから、食品重量から栄養価を推定する方法を検討する必要がある。このため本研究は、伝統的なクメール料理である「ボボーモアン(鶏肉入りお粥)」の栄養価を加熱調理後の食品重量から推定した。さらに現地調査を行い、都市部および農村部の市場で売られているボボーモアンを比較した。

    【方法】ボボーモアンのオリジナルレシピを作り、調理を3回行った。食品ごとに重量を測定し、平均値を栄養価計算に用いた。栄養価計算は食品成分表(八訂)を用いた。現地調査はプノンペン(都市部)およびカンポット(農村部)の主要な市場にて2食分を購入して分析を行った。

    【結果・考察】レシピから算出した栄養価に比べて調理後の食品重量から推定した栄養価はエネルギー、たんぱく質、脂質、食塩相当量を過小評価、カルシウムを過大評価されていた。鶏肉から溶出した油脂、調味料類を分離、重量測定することが困難であること、干しエビの戻し倍率が標準よりも大きかったことが要因であると考えられる。現地調査では2カ所のボボーに使われている食材や栄養価に大きな差が見られず、内臓や血液などの臓物類を使用していることが明らかになった。

  • 加藤 優依, 平井 智美, 飯田 文子
    セッションID: 1E-6
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/06
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    【目的】第4次食育推進基本計画では、食育においては対象者の特性や多様なニーズも考慮しつつ、国民の意見や考え方等を積極的に把握し、できる限り施策に反映させていくことが必要である、とされている。本研究では若年女性を対象に食の実態と食に対する意識を調査し、食育の方向性を検討した。

    【方法】2023年7~8月に18~34歳の女性を対象に、Google Formsを用いアンケート調査を行った。調査内容は基本属性、食に対する考えと行動、食習慣、調理における簡便さ、食の持続可能性に関する行動についての59項目とした。

    【結果・考察】大学生122人(平均20.2歳)、社会人48人(平均25.9歳)から回答を得た。回答者の51.2%が食事に旬の食材を取り入れていないと感じており、同94.1%が調理において簡便さを重視し、特に重視する簡便さは「調理時間が短い」、「調理工程が少ない」、「下処理が少ない」であった。「自分で調理した夕食をほとんど食べない」を選択した者(全体の37.1%)の23.8%が「30分以内」、20.6%が「20分以内」、17.5%が「15分以内」なら夕食を調理しようと思うと回答した。調理頻度別に夕食を調理しない理由を集計した結果、調理頻度高群(全体の15.3%)に比べ、調理頻度低群(全体の22.4%)は調理や買い物、献立作成が面倒だと感じていた。クロス集計の結果、旬の食材の摂取頻度は、朝食の摂取頻度や食の持続可能性に関する行動頻度と関連していた。以上から、調理時間30分以内、調理工程・下処理・買い物の手間と時間の短縮、旬の食材の使用という点に留意したレシピ提案が若年女性対象の食育において有効と考えられた。

  • ー北海道と沖縄県の比較ー
    伊藤 美穂, 田中 菜々子
    セッションID: 1E-7
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/06
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    【目的】学校給食は「生きた教材」として子どもたちの日々の食育に活用されている。これまでの我々の研究において,学校給食の「揚げ物」の主材料に魚介類が多く使用されていることが明らかとなっている。そこで,本研究では「魚介類」を使用した学校給食の献立を調査し,学校給食における魚介類の食され方を明らかにすることを目的とした。

    【方法】インターネット上で掲載されている2021年4月~2022年3月の学校給食献立表の中で,料理ごとの材料が詳細に記載されているものを調査対象とした。今回は北海道の3調理場,沖縄県の2調理場の献立表を分析対象とした。魚介類の使用頻度,種類,調理方法,料理様式などについて集計し,エクセル統計を用いて分析を行った。

    【結果】5調理場の給食献立の総料理数は4,843品であった。その中で,魚介類の使用頻度は11.1%(538品)であり,地域別でみると北海道が7.7%(219品),沖縄県が16.1%(319品)であった。献立の種類に着目すると,北海道は主食での使用が8.2%,主菜が53.9%,副菜が34.2%,汁物が3.7%であり,沖縄県は主食が11.3%,主菜が40.1%,副菜が37.0%,汁物が11.6%であった。沖縄県では,主食,副菜、汁物での利用が北海道と比較して多く見られた。使用されていた魚介類の種類は,北海道は加工されていないさば,ほき,さけが多く,沖縄県はちくわ,いとかまぼこ,ちきあぎなどの魚肉練製品が多かった。昨年調査した神奈川県,大阪府,兵庫県に多かったツナフレークは,沖縄県での使用は同様に多かったが,北海道ではわずか2回であった。これらの結果より,学校給食で食されている魚料理には地域の特徴がみられ,その地域の食文化が反映されていることが推察される。

  • 西田 毅, 松尾 有紗, 蓬莱 真利子, 山口 智, 井原 典子
    セッションID: 1E-8
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/06
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】先に明治から昭和初期におけるサラダ用の調味料について、工場製マヨネーズの普及以前には多様な調味料が存在したことを報告した。代表的なサラダ料理であるポテトサラダについても多様なレシピが存在することが考えられる。そこで本研究では工場製マヨネーズの普及以前のポテトサラダの特徴の変化を探ることを目的とした。【方法】明治大正昭和初期の家庭料理用の料理書を中心にレシピを調査した。レシピについて再現可能な方法で調理した。再現したポテトサラダの特徴を検討した。【結果】マヨネーズが一般化する1955年ごろまでの料理書には、ホワイトソースタイプのボイルドドレッシング、ゆで卵の卵黄やクリーム(乳製品)などを使用したサラダクリームなど、マヨネーズだけでなく数種類のサラダ用の調味料が併記されていた。ジャガイモを使用したサラダも、明治大正期にはドイツやフランス由来と思われるオイルやバターで和えるものが多くみられた。西洋野菜の入手難からか、セリやニラやウドなどを使用する例も見られた。マヨネーズは、肉や魚介用のソースとして扱われ、ポテトサラダには、ボイルドドレッシングなどが適するとの記載も見られた。工場製マヨネーズと手造りマヨネーズでは、乳化粒子の安定性が異なり、ポテトサラダでは、水分の移行によって安定性に欠ける傾向がみられるため、でん粉質のものにはボイルドドレッシングが適するとされた可能性がある。マヨネーズタイプのポテトサラダは、ロシアとアメリカの影響があり、現在のようにマヨネーズタイプで具材が豊富なポテトサラダが普及したのは、工場製マヨネーズの生産量が増える1955年ごろ以降と考えられる。

  • 石橋 ちなみ, 眞鍋 知里, 小田 結香, 竹中 重雄
    セッションID: 2A-1
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/06
    会議録・要旨集 フリー

    【背景】米の炊飯は,米を水に浸漬後,中~強火で温度を上昇,沸騰を持続させた後,弱火で蒸らす方法が一般的である。一方,近年では硬さや粘りといった食感の炊き分け機能を有する炊飯器が販売されており,炊飯時の調理工程(温度,時間等)を変化させることで米飯の食感を調節していると考えられる。本研究では,炊飯温度履歴の異なる炊飯器を用いて,炊飯時の調理工程が米飯の物理特性に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。

    【方法】炊飯には,3種の家庭用電気炊飯器(以下,A社,B社,C社))を用いた。炊飯時の温度履歴を測定し,「沸騰前」「沸騰後」「炊飯後」をそれぞれ設定した。各時点の米あるいは炊飯液を取り出し,重量,水分量,吸光スペクトル,テクスチャーを測定した。

    【結果】A社,B社の炊飯温度履歴は一般的な炊飯方法に類似していたものの,沸騰前および沸騰後の加熱時間がそれぞれ異なっていた。一方,C社は調理工程全体を通して緩やかに温度が上昇し続けた。米飯の重量および水分量はC社,A社,B社の順で多かった。炊飯液の吸光スペクトルから,いずれの炊飯器も沸騰前より沸騰後に多くの澱粉が溶出し,沸騰前はアミロペクチン,沸騰後はアミロースが主と考えられた。米飯の硬さは,B社,A社,C社の順で硬くなる傾向にあり,水分量が影響したと考えられた。米飯の粘着力はB社よりもA社で有意に高かった。A社はB社と比べて沸騰後の炊飯液量が多く加熱時間も長いため,沸騰後に米からの澱粉の溶出が進んだと考えられた。結果,米飯表面に澱粉層(おねば層)が形成されたことにより,A社は粘着力の高い米飯になったと推察された。

  • 奥西 智哉, 安藤 美紀子, 諏訪 憲久
    セッションID: 2A-2
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/06
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】チルド米飯は、低温で輸送することで賞味期限の延長を図ることで食品ロスの低減が期待されている。5℃以下での輸送時に米飯老化が進行し、喫食時には電子レンジ等の加熱が必要である。これまで、米飯の品質については炊き立て直後品について知見が蓄積されてきた。チルド輸送後の再加熱品について知見が得られたので報告する。【方法】精白米300gに1.4倍量の水を加え、マイコン式炊飯器(タイガー、JBU-A550)で炊飯米を得た。炊飯米の一部を25℃の恒温化で冷却した後、テンシプレッサーによる一粒低・高圧縮測定により各種米飯物性値を得た。同じ調製後の炊飯米約60gを60mmのディスク上に成形したものを5℃保存することでチルド米飯とした。3日5℃で保管後、500Wの電子レンジで60秒加熱した試料について、同様に米飯物性値を得た。また、生米から米粉を調製し、RVAによる糊化粘度特性を得た。【結果】水稲13銘柄を炊飯し冷蔵した。このチルド米飯を電子レンジ加熱させた米飯の品質は、米飯表層の硬さ(H1)、表層付着力(S1)およびそれらの比である表層バランス度(S1/H1)について炊飯直後品との相関が見られた。レンジ加熱米飯と炊立て米飯の品質差は、炊立て米飯品質の表層付着量(L3)、表層粘性(A3)、全体硬さ(H2)および全体粘性(A6)と相関が認められ、これらはいずれも糊化粘度特性のうち最高粘度とも相関があった。

  • 田村 翔平, 徳田 慎也
    セッションID: 2A-3
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/06
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    【目的】調理済み冷凍麺類は長期保管ができ、解凍してすぐに喫食できる便利な食品である。調理済み冷凍麺類の中でも焼きそば等の炒め麺は需要が高いが、一方で、大量調理・連続調理が難しいことが課題として挙げられる。そこで、連続的に食材を加熱調理可能な過熱水蒸気加熱装置に注目した。今回、フライパンで炒めたような炒め麺と同等の品質(食感・外観)を過熱水蒸気加熱で実現するために、中華麺を対象に検討を行い、物性および外観(表面)から影響を比較した。

    【方法】太さ2.1mmの中華麺を、茹でた後に水冷し、各種方法(フライパン調理、過熱水蒸気加熱調理、過熱水蒸気加熱調理後・短時間油調)で加熱し、冷蔵庫(4℃)で冷却した後、急速凍結機(-40℃)で冷凍した。レンジアップ解凍後、表面外観の目視確認およびクリープメータ(山電)での破断荷重測定を実施した。また解凍後、75%エタノール溶液でサンプル表面の油脂を除去し、レーザー顕微鏡(KEYENCE)での撮影・解析を実施した。

    【結果】目視確認の結果、茹で調理のみでは麺表面がなめらかな様子であるのに対し、茹で後フライパン調理では、麺表面が粗い様子であった。過熱水蒸気加熱調理後に短時間油調すると、表面が粗い様子になり、フライパン調理に近い外観になった。破断荷重測定の結果においても、過熱水蒸気加熱調理後に短時間油調すると、目標品質であるフライパン調理と同等の硬さであった。また、レーザー顕微鏡解析の結果、茹で調理のみに比べ、フライパン調理では表面のSa値(表面の平均面からの高さの絶対値の算術平均)は高くなり、過熱水蒸気加熱調理後に短時間油調すると、フライパン調理と同等のSa値を示した。

  • 村上 芽生, 新田 陽子
    セッションID: 2A-4
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/06
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    【目的】米の消費量が減少する中,米粉の利用が推進されている.米粉は原料価格が安いものの,製パン等に適した損傷でん粉率の低い高品質な米粉を作成するにはコストがかさむため,米粉製品の価格は小麦粉製品よりも高くなるという問題がある.そこで,ミキサーで簡易に製粉した米粉を原料とした,低価格米粉麺の作成を試みた.

    【方法】米はコシヒカリ(富山県産,令和5年度収穫)を原料とし,試料中にアルギン酸(I-1G,(株)キミカ,最終濃度0.3 w/w%)を混入した.米をミキサーで粗砕したのち約40メッシュの金網でふるったものにアルギン酸溶液を加え,90℃以上に加熱した約100gを180rpmで5分して生地を作成した.生地を4㎜角の麺に切り,0.8%塩化カルシウム水溶液に2分浸漬した後,水に2分浸漬した.一軸圧縮試験で刃型の治具を0.17㎜/sで麺に押し付ける際に現れた極大の荷重値から硬さを評価した.

    【結果・考察】カルシウムイオンによるアルギン酸のゲル形成によって麺表面にゲルの膜を作り,中アミロース米で作成した麺に見られる表面のべたつきをなくした麺について検討した.一軸圧縮試験で荷重値に極大が現れ,麺のコシを反映していると考えられた.アルギン酸無添加では極大が現れないことから,麺表面のアルギン酸の膜の破断により生じると考えられた.一軸圧縮試験上では,小麦粉で作られる麺と破断挙動に大きな違いはなく,噛み応えを再現できていると考えらえた.米粗砕物を使用した米麺は低価格であり,なおかつグルテンフリーの麺として今後の需要が見込まれ,米の消費増大への貢献が期待できる.

  • 阿久澤 さゆり, 峰村 貴央, 横井 琢也
    セッションID: 2A-5
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/06
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    【目的】 和菓子製品の特徴づけには、「餡」の品質の影響が大きい。「生餡」は原料豆を煮上げて摩砕し、篩別、水さらしを行って調製され、「餡(煉り餡)」は、糖液に生餡を加えて煮詰め、糖度を指標として仕上がりが管理されている。演者らは、主原料である小豆や白小豆(ササゲ属)、手亡や福白金時(インゲン属)の分離澱粉の微細構造について、手亡と福白金時(インゲン属)は、アミロース含量およびアミロペクチンの超長鎖の割合が高いこと、糊液の粘弾性はインゲン属が顕著に低いなど、各原料豆の特性を示した。本研究では、各豆から「生餡」を調製し、餡粒子の観察、損傷粒子を測定し生餡の性状を比較した。また、「生餡」にグラニュー糖を加えて加熱して「餡(煉り餡)」を調製し、その餡粒子の性状を比較した結果を報告する。

    【方法】小豆(北海道産)、白小豆(群馬県産)、手亡(北海道産)、福白金時(北海道産)の4種から生餡を調製して測定用試料とした。豆に水を加えて加熱後、煮汁と豆を分別して摩砕、篩別し、水さらし後の沈殿物を「生餡」、分離した溶液は水溶性画分として回収した。各生餡について、顕微鏡による餡粒子の観察、損傷餡粒子の測定、水溶性画分中の糖の定量し性状を比較した。また、生餡にグラニュー糖を加えて加熱しながら練ったものを餡(煉り餡)とした。

    【結果】各豆を用いて調製した生餡の餡粒子を観察したところ、小豆と白小豆は約100μm、福白金時と手亡は約115μmであった。また、各豆の種類により適した加熱時間が異なり、さらに加熱することで損傷餡粒子が生じることが示された。この影響は水さらし工程における試料の粘度が増加する傾向として示された。

  • -過酸化物価測定キットを用いた分析-
    荒井 恵美子, 出口 智博, 大武 義人
    セッションID: 2A-6
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/06
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    【目的】極少量の試料でも、精度よく揚げ物食品の劣化を定量的に把握可能なDSC(Differential Scanning Calorimeter)を用いた酸化開始温度手法を開発、さらに本手法を用いることで、現在、広く流通し、色の変化を見るだけで極めて迅速に評価可能な市販の過酸化物価測定キットの妥当性について検証、一定レベルの精度内で充分評価可能であることを見出した。本報告では、さらに過酸化物価測定キットを用い、市販天ぷらに着色料として多用されているビタミンB2(riboflavin)を添加した場合の劣化挙動を検討する。【方法】調理中の具材の影響(具材に含有するビタミン類の衣への溶出)を避けるため、試料は天ぷら衣のみにて、ビタミンB 2無添加、1%添加の2種類を作製。170℃×2分30秒加熱後、20℃試料、50℃試料の2種類に分けて保存し、それぞれ24hr、48hrの劣化処理後、試料に供した。劣化度評価には、過酸化物価測定キット(POVテスター、柴田科学製)およびDSCによる酸化開始温度手法を用いた。 【結果】ビタミンB 2添加有り無しでは劣化挙動が異なり、ビタミンB 2 添加試料は無添加試料に比べて有意に過酸化物価は高く、劣化進行が確認された。保存温度と保存時間の比較では、ビタミンB 2 無添加試料、添加試料ともに、保存温度が高い程、保存時間が長い程、過酸化物価は高い値を示し、50℃48hr試料が最も高く、その傾向は、ビタミンB 2 添加試料の方が強かった。酸化開始温度測定においても、過酸化物価と同様の劣化挙動を示した。以上より、着色料として添加されているビタミンB 2は、揚げ物食品(天ぷら)に劣化促進性を示すことが明確になった。

  • 山口(荒木) 彩, 木下 ひなの, 赤野 裕文, 多山 賢二
    セッションID: 2B-1
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/06
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    【目的】ハンバーグステーキ(以下、ハンバーグ)の調理に際に、食酢を添加して加熱することで食味が向上するとされている。しかし、それに関する詳しい研究はほとんどなされていない。そこで本研究では、豚ひき肉への食酢添加が、加熱調理して完成したハンバーグの物性や嗜好性に及ぼす影響について検討した。【実験方法】豚肩ロースブロックの肉部分をミンチ状にし、5 %分の水または穀物酢(以下、食酢)を添加し、2分間攪拌混合し成形後、各試料を4 ℃で16時間放置した。この試料をフライパンで片面1分間ずつ焼いた後、最後にオーブン加熱で中心温度を75 ℃・1分間保持させ、完成させた。試料の加熱調理による重量減少率などの測定の他、温かい状態での、試料の一定圧縮後に溶出される液の重量測定(圧縮脱液量)、テクスチャー解析、圧縮脱液中の油粒子の直径測定、圧縮脱液に含まれる脂質含量の簡易測定、官能評価を行った。【結果】食酢添加は、水添加よりも加熱調理による重量の減少率が大きかったものの、テクスチャー解析での硬さ応力に差はなく、官能評価での「やわらかさ」の項目でも有意差は見られなかった。また、圧縮脱液量に試料間に差はなく、「ジューシーさ」の項目で有意差はなかった。一方で、「脂っこさ」および「肉の臭みの強さ」の項目で、食酢添加は有意に低い評価が得られた。圧縮脱液中の脂質含量が、食酢添加により有意に減少したことに加え、その液中に存在する油粒子の平均直径が食酢添加で有意に小さくなっていた。「総合的な美味しさ」の項目で試料間に差はなかったが、食酢添加は豚ひき肉調理の点で食べやすい方向にシフトさせる可能性が示唆された。

  • 久保田 愛, 小﨑 智恵, 藤井 恵子
    セッションID: 2B-2
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/06
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    【目的】筋繊維を模倣した塊状代替肉の新たな調製方法として凍結解凍法を確立し、当該製法により各豆由来分離たん白から作製した代替肉の物理的特性を明らかにすることを目的とした。【方法】主原料となる豆由来分離たん白は大豆、えんどう豆、そら豆、緑豆を選択した。また、たん白溶液をゲル化させる方法として、加熱方法3種、凝固剤4種で試作を行い、最も適していたアルギン酸Naを選択した。各分離たん白5,10,20%溶液にアルギン酸Naを1,2,3,4%添加したゲルを作製した。ゲルは−20℃で72時間緩慢凍結し、5℃のCaCl₂溶液中で解凍・凝固させた。これを再び凍結・解凍した後、20kgの重しをのせ、25℃で1時間圧搾脱水したものを代替肉とした。代替肉は静的粘弾性、破断特性、テクスチャー特性を測定し、畜肉及び市販食品の力学特性と併せて比較した。【結果・考察】代替肉はたん白濃度が高いほど、硬さ、ガム性が小さく、軟らかく噛み応えがなかった。また、アルギン酸Na濃度が高いほどみかけの弾性率、破断応力、破断エネルギーが大きく噛み応えがあった。そら豆由来代替肉は他の代替肉に比べて破断ひずみ、破断応力、破断エネルギーが大きく、しなやかで噛み応えがある代替肉であった。アルギン酸Na1,2%添加代替肉は、破断応力において畜肉に近い特性を示した。結論として、本研究で検討した凍結解凍法は、大豆たん白に加え、えんどう豆、そら豆、緑豆由来分離たん白にも適用可能であることが示された。また、回復力を示す凝集性と抵抗力を示すみかけの弾性率をもとに作製したテクスチャーマップより、そら豆、緑豆由来分離たん白は弾力や歯応えのある代替肉の原料として適していると考えられた。

  • 玉木 有子, 中山 由佳, 野田 寧, 石川 匡子, 小竹 佐知子
    セッションID: 2B-3
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/06
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    【目的】野菜の緑色色素(クロロフィル)は酸や加熱に弱く、退色しやすい。緑色野菜を茹でる際に塩を添加すると退色を抑える効果が報告されているが、実験で用いる塩が市販されている食用塩の特徴を代表しているとは言い難い。食用塩には固結防止剤が添加されたものや、有機酸が添加されたものなど様々あり、調理に使用すると茹で水の㏗が変化するものがある。そこで、市販食用塩の中から茹で水の㏗が変化する代表的な塩を選び、食用塩を1%添加して茹でたホウレンソウと茹で水の特徴を検証した。

    【方法】試料のホウレンソウは東京都区内の小売店より複数回購入した。水道水で洗浄後、室内に吊るして水滴を除去した。その後、1束ごとに葉柄を含む葉の全長でサイズを分類し、同サイズを比較試料に用いた。食用塩は特級精製塩、つけもの塩、クッキングソルト、雪塩の4種類とした。また、茹で水、水さらし、測定用の水は全て常温の蒸留水(以下、水)とした。調理方法は試料重量の10倍量の水または1%食塩水を沸騰させ2分間茹でた後、茹で水と同量の水に2回(計5分間)浸漬し、加熱前と同重量になるように巻きすを用いて手搾りした。茹で水は加熱前後の㏗と塩分濃度、色の変化(ΔE*ab)を常温で測定し、葉(葉柄)は還元型アスコルビン酸(AsA)と硝酸塩(硝酸イオン)を反射式光度計で測定した。

    【結果】1%食塩水の㏗は食用塩の種類によって異なった(㏗4~10)。茹で水の㏗は加熱前後共に無添加に比べて、つけもの塩では㏗が低く(㏗4~5.5)、雪塩では㏗が高かった(㏗8~9)。特級精製塩では㏗の変化がなかった(㏗6)。食用塩の種類によっては茹でた後の水が無添加よりも着色し、成分損失が大きいものが認められた。

  • 中山 由佳, 野田 寧, 石川 匡子, 小林 史幸, 小竹 佐知子
    セッションID: 2B-4
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/06
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    【目的】うどんは,小麦粉,水,食塩を原料として製造されるが,添加される食塩の量や麺の太さなどは,地域により異なる。市販うどん乾麺は,栄養成分として食塩相当量(以降食塩量と表記)が表示されているが,うどん乾麺の食塩量は茹で,水洗いにより溶出するため,調理後の麺の食塩量は表示された値とは異なる。日本人の食塩摂取量を考慮すると,茹で後,すなわち喫食時の麺の食塩量の情報が重要であると考える。そこで,麺の太さ,食塩量などが異なる各地のうどん乾麺8種類(稲庭(3種),ひもかわ,水沢,埼玉,武蔵野,讃岐)を用いて,茹でおよび水洗い操作による麺からの食塩の溶出率について調査した。【方法】選定したうどん乾麺100gをそれぞれ指定された時間茹で,茹で後の麺を水洗い(0~4.5Lの水を使用)し,茹で前後の麺の食塩量(ナトリウム)をICP-OESにより測定し,比較した。【結果・考察】うどん乾麺の食塩量は1.8~5.0%の範囲にあった。茹で,水洗い操作後の麺の食塩量は0.06~0.09%となり,食塩溶出率は91~96%であった。一方,水洗いなし(81%溶出,讃岐のみ測定)に比べ,水洗いにより,麺からさらに食塩が14%溶出されることが認められた。また,水洗い時の水量が多くなるほど食塩の溶出量が多くなった。本結果から,製品の初期食塩量の多少にかかわらず,90%程度の食塩が調理中に溶出除去され,これらは喫食されないことが判明した。讃岐うどんの場合,一食当たり(200g)の摂取食塩量は0.12gと算出され,厚労省提示の成人摂取目標量(男7.5g,女6.5g未満/日)のそれぞれ1.6%および1.8%に相当することが判った。

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