日本調理科学会大会研究発表要旨集
2024年度大会(一社)日本調理科学会
セッションID: 2C-2
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レモン果汁への浸漬処理による鶏肉の軟らかさや保水性及び嗜好性に及ぼす影響
*神谷 真帆井上 孝司
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抄録

【目的】近年健康への意識の高まりから、タンパク質関連の食品市場は拡大している。食肉の中でも鶏ムネ肉は良質なタンパク源であり、比較的安価な食材であるため需要が高い。一方で、鶏ムネ肉は脂肪量が少ないため、加熱調理した際にパサパサして硬くなりやすい。これまでに、食肉のpHが低下すると、肉内の酸性プロテアーゼが働き、軟化することや保水性が高まることが知られている。レモン果汁にはクエン酸が多量に含まれていることから、pHを低下させ、食肉を軟化させることが期待できる。しかし、レモン果汁による軟化作用とその要因についての報告はほとんどない。そこで本研究では、鶏ムネ肉を用いて、レモン果汁への浸漬による、加熱調理後の軟らかさと保水性に与える影響を検討した。

【方法】鶏ムネ肉10gあたり30mLの調味液(純水、25%レモン果汁希釈液、100%レモン果汁原液、6%クエン酸溶液)に一定時間の浸漬および加熱(中心温度が 75℃に達した後 1 分以上)した。官能評価と物性評価を常温で行い、軟らかさの指標としてクリープメーターによる破断荷重、保水性の指標として水分含量を測定した。

【結果・考察】官能評価において、レモン果汁の浸漬により軟らかさおよびしっとりさのスコアが上がった。また、レモン果汁への浸漬により、水分含量の上昇、破断荷重の低下が見られた。レモン果汁への浸漬よる破断荷重の低下は、加熱方法によらず見られた。これらの結果から、レモン果汁にあらかじめ浸漬することで、加熱後の鶏ムネ肉が軟化することおよび保水性が向上することが示唆された。調理後の経時的な変化および軟化した要因と考えられるタンパク質構造の変化については当日報告する。

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