主催: (一社)日本調理科学会
会議名: 2024年度大会(一社)日本調理科学会
回次: 35
開催地: 鎌倉女子大学
開催日: 2024/09/06 - 2024/09/07
【目的】チョコレートの美味しさの1つでもある口どけは、原料のココアバター(CB)の結晶多形に起因している。CBにはⅠ型からⅥ型まで6つの結晶多形が存在する。このうち体温直下の約33℃に融点を持ち、口に入れた際に滑らかな口どけを示す点からCBをⅤ型で結晶化することが、チョコレート製造では重要である。しかし近年、気候変動によるカカオ豆の生産量の著しい減少や、世界的なチョコレート消費量の急増から、原料のカカオ豆は供給不足である。そこでチョコレートの代替素材として焙煎ごぼう及びココアバター代用脂(CBE)に着目した。ごぼうは食物繊維やポリフェノール類に富み、焙煎によりチョコレートと類似した香気成分を示すことが明らかになっている。そこで本実験では、焙煎ごぼう及びCBEで作製したチョコレート様油脂加工食品とCBEの融解挙動や多形構造を比較し、焙煎ごぼうの添加がCBEの結晶化に与える影響を明らかにすることを目的とした。
【方法】(株)あじかん提供の焙煎ごぼう、CBE及びココアパウダーを用いてチョコレート様食品を調製した。5℃及び20℃の一定温度で2週間及び2ヶ月間保存した試料を用い、示差走査熱量測定から得られた融解ピークよりCBのⅤ型に対応するCBEのβ₂型の結晶量を解析した。また、放射光X線回折測定で試料の多形を測定した。
【結果】試料は約33℃に融解ピークが確認され、チョコレートとの食感の類似性が示唆された。また焙煎ごぼうを添加した試料のβ₂型の結晶量はCBE単体より約2倍多くなった。したがって、本チョコレート様食品は香り、食感、結晶化挙動の観点でチョコレートに並ぶ新規スイーツとしての可能性を十分に秘めていることが明らかとなった。