日本調理科学会大会研究発表要旨集
2025年度大会(一社)日本調理科学会
セッションID: 1P-02
会議情報

キャンディとクッキーの品質に及ぼす水分含量の影響
*森井 沙衣子末廣 彩花西山 さくら坂本 薫
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】加熱調理品は加熱条件や材料によりその品質が大きく影響される。砂糖は純度が高く,結晶性の物質であるものの,熔融温度が異なるものがある。すでに,水分を含まない砂糖の加熱調理品は,着色状況や官能評価結果に差が見られ,質的な差が観察されたことを報告した。一方,すべての砂糖を水に溶解させてから加熱した場合は融点の差の影響は認められなかった。そこで,本研究では砂糖の加熱調理品の水分含量に着目し,水分が砂糖の加熱調理品に与える影響を検討することとした。【方法】砂糖は市販グラニュ糖(W)とWを粉砕した粉砕糖(WP)を加熱調理品の調製に用い,水分を含まないキャンディおよび材料の10%の水分を含むクッキーを調製した。以前に報告した顕微鏡観察,色差測定,官能評価に加えて還元糖測定,水分および水分活性測定についても測定を行った。【結果】水分を加えず調製したキャンディではWキャンディよりもWPキャンディが着色したが、水分を含むクッキーでは結果が逆転し、Wクッキーで着色は濃くなり,苦味が増した。生成された還元糖量にも差が生じ、WPで調製した加熱調理品の還元糖量が多くなった。水分を含まないキャンディでは180℃で加熱した場合、粉砕糖WPのほうがグラニュ糖Wよりも熱分解が進んだことが推察され,水分を含むクッキーでは、グラニュ糖Wよりも粉砕糖WPを使用したほうが早い段階から生地の水分に砂糖が溶けたため,加熱による熱分解が進み,還元糖や着色状況などの品質に差が生じたと考えられた。砂糖の加熱調理品の品質には、カラメル化やアミノカルボニル反応によって起こる着色物質や苦味物質が影響するが,共存する水分とその量にもその品質に関与することが示唆された。

著者関連情報
© 2025 日本調理科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top