2025 年 24 巻 6 号 p. 129-148
本稿の目的は、免許返納後の交通弱者への対応という社会課題と事業性の両立を実現した株式会社アイシンのAIオンデマンド交通「チョイソコ」を対象に、企業内の個に着目して両立型価値創出の戦略的メカニズムを解明することである。本研究は、オープン・イノベーション2.0 (OI 2.0) が強調する産学官市民の共創的枠組みに注目し、制度・技術・現場の3層がいかに動的に接続されたのかを質的事例分析により検討した。分析の結果、社会的価値と経済的価値の両立は、企業内の個によるミクロな介入行動が状況に応じて3層を再構成し、価値創出プロセスを循環的に駆動することで達成されていたことが明らかとなった。本研究は、両立型価値創出の構造を理論的に提示し、OI 2.0研究に「企業内の個による動的再構成」という視座を加えるとともに、実務的示唆を提供する。