本研究は、自主管理チームのメンバーには政治的スキルが必要であるという前提に基づき、メンバーの政治的スキルと職務パフォーマンスの関係につき検証する。達成志向モチベーション、自主管理の程度、向社会モチベーションのそれぞれが、政治的スキルと職務パフォーマンスとの関係に正の影響を与えるという仮説を設定した。調査の結果、政治的スキルと職務パフォーマンスとの関係に正の影響を与えるのは、自主管理の程度であることが明らかになり、自主管理の程度が高い場合に、政治スキルが低いメンバーだと職務パフォーマンスが大きく落ちる可能性がある旨が示唆された。本研究は、自主管理チームの効率的な運営に関する理論に貢献するとともに、実務に対して、チームの自律性の程度を高める場合には、政治的スキルを有するチームメンバーを選抜することが必要であることを示唆する。
早期公開
本稿は、経営資源が限られている小規模な地場産品家族企業の中に、なぜ自社製品の輸出を実現できる企業があるのか、どのように外国市場参入という困難な海外事業を成功させるのか、そのプロセスと背後にあるメカニズムについて考察したものである。直接輸出を実現した希少な企業1社を取り上げて、なぜ、どのようにして外国市場参入を成功させたのか、動態的な国際化プロセスを長期に観察した。その結果、そこにおいて境界連結役割という概念が有用な視点となり得ることを論じる。
経営学で考える(14)
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経営学で考える(2)
経営学で考える (1)
経営学の論文では「統計的に有意」によく出くわす。標本調査は全数調査と比べて安く実施できるが、どうしても標本抽出に伴う標本誤差が生じてしまう。しかし標本抽出を「くじ引き」にすれば、その標本誤差も確率を使って評価できる。それが有意確率で、実は仮説からの乖離が標本誤差の範囲を超えていますよ (=標本誤差では片づけられないですよ) という意味で「統計的に有意」だったのである。
大学院生のための研究入門(3)
本稿は経営学分野の学術論文における「筋が悪い」リサーチクエスチョンを説明したものである。まず、学術的ではないビジネスレポート的リサーチクエスチョンを取り上げる。次に、学術的だが筋の悪いリサーチクエスチョンとして、(1)「無知」によるリサーチクエスチョン、(2)「無謀」なリサーチクエスチョン、(3)「無理矢理」なリサーチクエスチョンをとりあげる。その上で、「筋が悪い」リサーチクエスチョンに陥らないために考慮すべきことを議論する。
大学院生のための研究入門(2)
日本の社史は、社内に社史編纂委員会・社史編纂室が設けられ、社内で執筆され、著者が明示されず、会社が刊行するが、出版はされない、という例が多い。社外の専門家が執筆する場合も、奥付に名前が出ることは珍しい。ただし正史の社史の他に、普及版が刊行される場合は、著者名が奥付に明記されることが多い。これに対し、欧米の社史は、外部の専門家が執筆し、著者名が明記され、出版社から出版されるのが一般的である。ただし会社で原稿をチェックし、会社が意見を付けられるようになっている。さらに山一証券100 年史の事例にもとづき、社史がどのように刊行されるかを述べる。
大学院生のための研究入門(1)
本稿の目的はidiosyncratic deals (以下i-dealsとして表記する。) に関する既存研究について統合的文献レビューを行うことで、今後の研究課題を提示することである。まずはi-dealsの定義、特徴、位置付け、既存のレビュー研究を確認した。その後、既存のi-deals研究 (n=32) を基に統合的文献レビューを行い、i-deals研究の現状をi-dealsの発生タイミング、交渉プロセス、測定方法、先行要因、アウトカムの観点で分析した。i-deals研究の分析結果より、今後の研究課題をi-dealsと先行要因・アウトカムの関係性、働く場所に関するi-deals、マネジメント観点でのi-deals、日本におけるi-dealsの4つの観点で7つ提示する。
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