日本では2000年前後、クレジット・カードの課金コストのせいで、少額の電子商取引はペイしないと言われていた。特にデジタル財の場合は、無償提供した方がいいとまで言われていた。そのため様々な電子決済手段が考案され、実装もされたが、そんな中で、日本信販は技術的にも経済的にもユーザーにとって優れたシステムを徹底的に作り込んだECトータル決済ソリューションを開発し、営業の現場判断でカード決済のシステム使用料を劇的に低下させながら、営業を推進した。その結果、「ECカード」つまりクレジット・カード決済が生き残り、少額の電子商取引でもペイするようになった。
早期公開
本論文では、創業者の企業家的アイデンティティが、戦略と結びつきながら強化・発展し、世代を超えて持続的な影響力を持つに至るプロセスと、その基盤にある因果メカニズムを明らかにした。そのために、産業用機能紙を主対象とする湿式不織布メーカーの廣瀬製紙株式会社を対象として詳細な事例研究を実施した。同社においては、創業者が会社設立以前に形成した企業家的アイデンティティが、技術商社と水平連携するビジネスシステムを前提とするコア技術戦略と密接に結びついていた。こうした創業者による戦略とアイデンティティの緊密な結合は、後継世代において承継・活用され、その正負の影響の統合的なマネジメントを経て液体処理のための濾過フィルター用MF/UF膜支持体の分野におけるグローバルニッチトップの達成で基盤的な役割を果たした。
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経営学で考える (1)
経営学の論文では「統計的に有意」によく出くわす。標本調査は全数調査と比べて安く実施できるが、どうしても標本抽出に伴う標本誤差が生じてしまう。しかし標本抽出を「くじ引き」にすれば、その標本誤差も確率を使って評価できる。それが有意確率で、実は仮説からの乖離が標本誤差の範囲を超えていますよ (=標本誤差では片づけられないですよ) という意味で「統計的に有意」だったのである。
大学院生のための研究入門(3)
本稿は経営学分野の学術論文における「筋が悪い」リサーチクエスチョンを説明したものである。まず、学術的ではないビジネスレポート的リサーチクエスチョンを取り上げる。次に、学術的だが筋の悪いリサーチクエスチョンとして、(1)「無知」によるリサーチクエスチョン、(2)「無謀」なリサーチクエスチョン、(3)「無理矢理」なリサーチクエスチョンをとりあげる。その上で、「筋が悪い」リサーチクエスチョンに陥らないために考慮すべきことを議論する。
大学院生のための研究入門(2)
日本の社史は、社内に社史編纂委員会・社史編纂室が設けられ、社内で執筆され、著者が明示されず、会社が刊行するが、出版はされない、という例が多い。社外の専門家が執筆する場合も、奥付に名前が出ることは珍しい。ただし正史の社史の他に、普及版が刊行される場合は、著者名が奥付に明記されることが多い。これに対し、欧米の社史は、外部の専門家が執筆し、著者名が明記され、出版社から出版されるのが一般的である。ただし会社で原稿をチェックし、会社が意見を付けられるようになっている。さらに山一証券100 年史の事例にもとづき、社史がどのように刊行されるかを述べる。
大学院生のための研究入門(1)
経営学においてサステナビリティとウェルビーイングへの関心が高まっている。一方で、これまで両者の関係性を体系的に整理した研究は限定的であった。本研究の目的は、経営学分野におけるサステナビリティとウェルビーイングに関する研究の潮流を明らかにし、両概念がどのように扱われ、どのような関係性が議論されてきたかを統合的に分析し、将来の研究課題を導出することである。そのために本研究はFinancial Times選定のトップジャーナル50誌 (FT50) に掲載された関連論文33本を対象にシステマティックレビューを実施し、五つの研究潮流に分類したうえで、サステナビリティとウェルビーイングの概念化の動向を横断的に分析した。本研究の学術的貢献は、断片的に議論された二概念の関係を構造化し、今後の研究の課題・方向性を示した点にある。
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