本研究では、類似の組織変革に慣れた組織が、どのように新しい組織変革を実現させることができたのか、変革ルーティンに注目し、地方自治体の財政改革と働き方改革に関する事例研究により新たな変革ルーティンの形成プロセスを明らかにする。本研究から、先行研究と異なり、新たな変革ルーティンが形成されることが明らかになる。これは、組織レベルのパワーという概念を変革ルーティンに取り入れると、パワーの源泉の変化により、新たな変革ルーティンが形成されることになる。そして、新たな変革ルーティンにより類似の組織変革に慣れた地方自治体が新たな組織変革を実現することが示唆される。
早期公開
本論文では、後継世代のアントレプレナーシップにおける「電子テキストとしての企業家的レガシー」の役割と機能を明らかにした。創業420 年および会社設立105 年の歴史を持つファミリー企業の司牡丹酒造株式会社は、中興の祖である竹村源十郎以降、嫡孫の維早夫、維早夫の長男の昭彦によって経営が受け継がれてきた。その間、それぞれの世代において、高知県だけでなく日本全国の日本酒製造業界に先駆けて、日本酒の製造・販売や酒米の栽培に関する革新を追求してきた。現世代の昭彦は、源十郎以降の家業の歴史である「司牡丹物語」を企業家的レガシーとして電子テキスト化しつつ、それをもとに自らのアントレプレナーシップを育んだ。それは、後にWeb コンテンツへ発展し、従来の語りとしての企業家的レガシーと比べて、反脆弱性、柔軟性、アクセス性の面で優れていた。
9章ではバイオテック企業の創薬プロジェクトを対象として、バイオテック企業で繰り返し行われている、複雑性に満ちた環境に対応しながら創薬プロジェクトを推進するためのルーチンを抽出する。さらに、グラウンデッドセオリーアプローチを用いて、三つの戦略ルーチンと三つのパフォーティブルーチンを抽出し、この2種類のルーチンの補完的な関係やルーチンの階層性がバイオテック企業の事例を用いて示される。こうしたルーチンが駆動することで、本来であれば発揮されうるダイナミックケイパビリティが発揮されず、当初の見通しのまま、進捗を取り繕ってでもプロジェクトが推進される現象があることをDynamic In-capabilitiesとして揶揄的に示している。
本稿は、Howard-Grenville et al. (2016) の第10章「関係的なパワー、人格および組織」を紹介したものである。第10章は、これまでの章とは異なり、組織ルーチン論から離れ、プロセス哲学の視点から、関係的なパワーのもたらす創造性について提言している。本稿では、第10章の概要を紹介したうえで、プロセス哲学の視点と組織ルーチンのプロセス学派の共通点や、プロセス学派の描く世界観の行方について論じる。
経営学で考える(14)
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経営学で考える (1)
経営学の論文では「統計的に有意」によく出くわす。標本調査は全数調査と比べて安く実施できるが、どうしても標本抽出に伴う標本誤差が生じてしまう。しかし標本抽出を「くじ引き」にすれば、その標本誤差も確率を使って評価できる。それが有意確率で、実は仮説からの乖離が標本誤差の範囲を超えていますよ (=標本誤差では片づけられないですよ) という意味で「統計的に有意」だったのである。
大学院生のための研究入門(3)
本稿は経営学分野の学術論文における「筋が悪い」リサーチクエスチョンを説明したものである。まず、学術的ではないビジネスレポート的リサーチクエスチョンを取り上げる。次に、学術的だが筋の悪いリサーチクエスチョンとして、(1)「無知」によるリサーチクエスチョン、(2)「無謀」なリサーチクエスチョン、(3)「無理矢理」なリサーチクエスチョンをとりあげる。その上で、「筋が悪い」リサーチクエスチョンに陥らないために考慮すべきことを議論する。
大学院生のための研究入門(2)
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