本研究では、類似の組織変革に慣れた組織が、どのように新しい組織変革を実現させることができたのか、変革ルーティンに注目し、地方自治体の財政改革と働き方改革に関する事例研究により新たな変革ルーティンの形成プロセスを明らかにする。本研究から、先行研究と異なり、新たな変革ルーティンが形成されることが明らかになる。これは、組織レベルのパワーという概念を変革ルーティンに取り入れると、パワーの源泉の変化により、新たな変革ルーティンが形成されることになる。そして、新たな変革ルーティンにより類似の組織変革に慣れた地方自治体が新たな組織変革を実現することが示唆される。
本稿は、Howard-Grenville et al. (2016) の第10章「関係的なパワー、人格および組織」を紹介したものである。第10章は、これまでの章とは異なり、組織ルーチン論から離れ、プロセス哲学の視点から、関係的なパワーのもたらす創造性について提言している。本稿では、第10章の概要を紹介したうえで、プロセス哲学の視点と組織ルーチンのプロセス学派の共通点や、プロセス学派の描く世界観の行方について論じる。