製品アーキテクチャの測定においては開発関係者の協力を得るのが王道とされてきた。しかしながらこのアプローチは聞き取りが困難な場合もあることや、企業進出を受け入れる後発国側には採用するのが困難な方法であった。本稿で提案するのは製品サンプルの分解によって製品のアーキテクチャを識別する分解アプローチである。この方法は既存研究の系譜のなかで、機能と構造アプローチとインターフェース・アプローチの視点から実証研究を行う手段と位置付けられる。適用例として取り上げたのは製品全体としてはインテグラル型であるが一部にモジュラー化された階層が存在するプリンターである。現在のプリンターの主流であるインクジェットプリンターとページプリンターに分解アプローチを適用することによってモジュラー化されたユニットを抽出し、そのモジュラー度を測定し、スコア化することを試みた。その結果、プリンターの製品アーキテクチャには一部モジュラー化された階層が存在することと、プリンターの方式によりそのモジュラー度には差があることが明らかになった。
5章では、Arthur (2009) のフレームワークに準拠し、行動パターンが急進的に変化する事象に対し説明を試みる。ここでは、ランダムな変異 (variation) ではなく、意図的な再結合 (recombination) の重要性が示される。そして、生物学ではない領域における進化的プロセスについて、Arthur (2009) のテクノロジー進化における再結合の役割を参照しながら、レビューする。ルーチンの拡散という観点から、時間とメカニズムを考察し、ルーチンが急進的に変化するプロセスのモデル構築を、ナラティブネットワークを用いて行う。