2019 年 56 巻 2 号 p. 64-69
自律神経学を構築したLangleyとCannonの論述には疑問がある.(1) 自律神経と情動:JamesとLangeは自律神経活動が情動を惹起するとし,Cannonは情動が自律神経に影響を及ぼすとしたが.後者の見解は末梢神経だけを自律神経と定義したLangleyに由来する誤解である.情動の主座の間脳は中枢自律神経線維網の一部である.(2) 脊髄副交感神経:Langleyは胸・腰髄から起始する副交感神経を否認したが,呉らはイヌの脊髄後根を切断し,中枢側断端で変性を免れた遠心線維(脊髄副交感神経)を証明した.(3) 脱神経過敏:Eppingerらは交感神経緊張症でadrenalineに対する臓器反応が亢進すると主張した.この見解は脱神経過敏の法則(Cannon)に反すると批判されたが,Eppingerらの症例は自律神経不全症ではないので,脱神経過敏の観点からこの学説を批判するのは見当違いである.