背部への軽擦または温熱刺激が心拍数におよぼす影響とその自律神経機序を若年健常女性で検討した.刺激は腹臥位にて①タオル上からの軽擦,②温タオル上からの軽擦,③タオルのみの静置の3種類をランダムに加えた.軽擦刺激では心拍数と心拍変動解析によるLF/HFとnormalized LF(LFnu)が減少し,副交感神経活動指標のnormalized HF(HFnu)が増加した.温+軽擦刺激ではそれらの効果が延長した.タオル静置でも同様の効果を認めたが,軽擦刺激に比べ効果の持続時間は短かった.刺激を加えずに継続して安静腹臥位を取らせた場合は,上述の変化は認められなかった(コントロール).リラクゼーション指標のスコアは刺激前後において軽擦刺激では有意に増加し,温+軽擦刺激ではさらに高いスコアを示した.以上,背部への触圧および温熱刺激により交感神経並びに副交感神経を介して心拍数が減少することが示唆され,その減少には一部精神的リラクゼーション効果が関わると考えられた.