脳脊髄液(CSF)産生の自律神経支配に関する研究史を述べる.脈絡叢が交感・副交感神経の二重支配であることはBenedikt(1875),Stöhr(1922),Tsuker(1947)ら,adrenaline作動性・choline作動性線維が存在することはEdvinssonら(1972,73)によって示された.交感神経切除でCSF産生が一過性に上昇すること(von Bakay,1941;Hegedusら,1965;Lindvallら,1978),交感神経刺激で減少すること(Dorigottiら,1972;Haywood,1975;Lindvallら,1978)が報告されているが,自律神経作動薬の効果については結論の一致をみていない.CSFは脈絡叢由来の液体と軟膜由来の液体の混合物であり,前者の産生は腺組織に対する自律神経の直接作用,後者の産生は血流を介する作用と推測される.