本研究の目的は,触刺激の影響を昇圧時と非昇圧時とで比較することである.昇圧を起こすために,右手首までを冷水(8-10℃)に浸水させた(冷浸水実験).対照浸水実験には,30-32℃の水を用い,いずれの場合も3分間浸水させた.血圧の測定には自動血圧計を用いた.冷浸水または対照浸水を開始した1分後から徒手による触刺激を背部に2分間加えた.冷浸水中に背部へ触刺激を加えると,触刺激がない場合と比べて収縮期血圧と拡張期血圧の昇圧反応がいずれも有意に減弱した.対照浸水のみでは収縮期血圧,拡張期血圧ともに有意な変化を認めなかったが,浸水中に触刺激を加えることで拡張期血圧が有意に減弱した.また,触刺激の降圧効果は対照浸水時よりも冷浸水時において顕著であった.以上の結果より,急性昇圧時の降圧における触刺激の有効性が示された.