自律神経
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Print ISSN : 0288-9250
ミニレビュー
嗅球の血流調節における前脳基底部コリン作動性神経系の役割
内田 さえ
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2020 年 57 巻 4 号 p. 212-216

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抄録

前脳基底部に起始するコリン作動性神経は,認知・記憶・嗅覚に関わる大脳の新皮質・海馬・嗅球に投射する.新皮質や海馬では,コリン作動性神経は自律神経様の血管拡張神経として機能する.近年筆者らは,嗅球の血流調節におけるコリン作動性神経の役割を調べてきた.嗅球に入力するコリン作動性神経はアセチルコリンを放出するものの,その量は新皮質の半分以下であり,嗅球の局所血流に影響を及ぼさない.一方,匂い刺激で誘発される嗅球血流増加反応は脳内ニコチン受容体の活性化により増大することから,コリン作動性伝達は嗅球の匂い感受性を高めると考えられる.認知症初期にみられる嗅覚障害にコリン作動系障害の関与が示唆される.

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© 2020 日本自律神経学会
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