2021 年 58 巻 1 号 p. 101-104
運動時に見られる急性の自律性生体反応(頻脈・昇圧など)は恒常性維持に必須の生体適応である.運動時の循環調節における中枢の重要性は19世紀末には指摘されていたにも関わらず,そのメカニズムの解明研究は現在でも進んでいない.本稿では「運動時の中枢性循環調節メカニズムの解明」を念頭に,セントラルコマンド(運動を発現するために脳で生じる,骨格筋収縮と自律神経系の変化とをパラレルに引き起こすシグナル)の機能生成を担う脳内回路を解析する意義とそれにまつわる知見,そして今後の課題について論じる.