内耳(骨迷路)にある前庭系の末梢器官は耳石器と半規管で構成されている.耳石器(球形嚢と卵形嚢)は重力や頭位を,また半規管は回転加速度を認知する.これらの末梢器官は眼球運動(前庭動眼反射)や姿勢(前庭脊髄反射)を制御している.興味深いことに,末梢前庭器への刺激は交感神経を介した動脈血圧応答を引き起こすことも明らかになってきた(前庭動脈血圧反射).さらに,この応答性は重力環境変化による前庭系の可塑により低下することがわかってきた.本稿では,起立耐性に対する前庭動脈血圧反射の役割について説明する.また,高齢者や宇宙飛行士の前庭機能低下に対する末梢前庭器電気刺激法の可能性についても述べる.