2021 年 58 巻 1 号 p. 12-16
トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー(ATTR-FAP)は,TTRの遺伝子変異が原因となり,アミロイド線維が末梢神経や自律神経系に沈着し機能障害を起こす遺伝性全身性アミロイドーシスである.本症の多くの症例で,小径線維ニューロパチーを起こすとともに,早期から起立性低血圧,発汗障害,消化管運動異常,勃起不全などの多彩な自律神経障害を認め,患者の生命予後やQOLに影響を及ぼす.近年,末梢の自律神経障害の非侵襲的な検査としては皮膚生検と共に,非侵襲的なSudoscanが有用である.疾患修飾薬としてTTR四量体安定化剤が認可され,遺伝子サイレンシングの臨床治験も進行中である.これらの新規治療薬は,いずれも発症早期からの治療介入が最も進行抑制効果を示すことから,自律神経障害の早期診断がますます重要となっている.