2021 年 58 巻 1 号 p. 133-138
心理ストレスは様々な交感神経反応を惹起し,ストレサーに対して身体が迅速に対処するのを助ける.心理ストレスや情動は皮質辺縁系で処理され,一方,生体恒常性の維持は視床下部や脳幹が担う.しかし,皮質辺縁系と視床下部を繋ぐ心身相関の神経路は不明であった.我々は,心理ストレスが視床下部背内側部(DMH)から延髄縫線核への神経伝達を通じて交感神経出力を亢進させ,体温上昇や脈拍・血圧の上昇といったストレス反応を惹起することを見出した.さらに最近では,内側前頭前野の一部からDMHへ心理ストレス信号が伝達され,交感神経反応だけでなくストレス行動も駆動することを明らかにし,心身相関の鍵となる神経路を解明した.