2021 年 58 巻 1 号 p. 86-90
レニン・アンジオテンシン系(RAS)は脳内にも存在し,脳内RASの亢進は交感神経活性化を来す.RASの律速酵素レニンには,分泌型レニンと細胞内レニン(細胞外に分泌されず細胞内に留まる)のアイソフォームがあり,脳内では細胞内レニンが優位に発現する.興味深いことに,細胞内レニンノックアウトにより,交感神経活性化を伴って血圧は上昇し,高脂肪食誘発性体重増加は抑制された.さらには脳内の分泌型レニンの増加を介した脳内RAS亢進がみられた.これらより,細胞内レニンは脳内において分泌型レニン発現に対して抑制的に働き,下流のアンジオテンシン産生を抑制することで,脳内RASという中枢性循環・代謝調節機構を制御している可能性が示唆された.