私たちは,グレリンアゴニストをラットに投与すると排便が誘発されるという想定外の現象に遭遇し,その作用機序を追究したところ,グレリンの作用点は脊髄(腰仙髄部)の排便中枢であることが明らかとなった.グレリン以外にも,ノルアドレナリン,ドパミン,セロトニンが脊髄に作用して大腸運動を亢進させることが判明したが,これらのモノアミン類が下行性疼痛抑制経路の伝達物質であることから,“痛みの抑制経路と大腸運動の調節経路が脊髄を接点として連動する”という新しい概念に立脚した研究を展開するに至った.本稿では,消化管運動の中枢性制御機構について,私たちの知見を中心にまとめる.