2022 年 59 巻 3 号 p. 266-269
自律神経系は内部環境を一定の設定値に保つhomeostasisを担う.一方,生体リズムや外部環境変化への適応のために内部環境は変動する.また,ヒトは近い未来に行う行動を予測し,内部環境を変化させる.例えば筋肉は運動時に多くの血液供給を必要とし,脳は筋肉を動かす命令と同時に自律神経系を介して筋肉の血流を増加させる命令をだす.この見込み制御をcentral commandと呼ぶ.もうひとつがストレスを認知することで惹起される情動行動に合わせて事前に内部環境を変化させるallostasisで,allostasisと情動行動の不一致があると体調不良が生じる.本稿では予測と内部環境の変動に着目し,自律神経系の役割とその異常について解説する.