2023 年 60 巻 2 号 p. 92-96
拍動や呼吸の速さ,胃の痛みなど,自律神経系を含む身体内部の状態は内受容感覚を通して知覚されている.近年,内受容感覚を測定する指標として,脳波における心拍誘発電位(Heartbeat-evoked potentials:HEP)が注目されている.HEPは心電図のR波を基準とした誘発電位であり,主観報告の必要のない,心臓からの求心性信号を反映している時間解像度の高い指標として,注意,感情,自己認識といった心的機能や,精神疾患と関係があることが報告されている.本研究ではHEPが有効な指標であることについて,さまざまな認知機能との関係性に焦点を当てながら概観する.