自律神経
Online ISSN : 2434-7035
Print ISSN : 0288-9250
60 巻, 3 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
第75回日本自律神経学会総会
  • 山本 達也
    2023 年 60 巻 3 号 p. 103-105
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/25
    ジャーナル フリー

    パーキンソン病は様々な非運動症状を認めるが,その中でも自律神経障害はADL(Activities of Daily Living)やQOL(Quality of Life)に大きく影響する.排尿障害は頻尿・尿意切迫感などの過活動膀胱が多くの患者で認められる.排便障害は便秘が高頻度に認められ,運動症状発症前からみられることも多い.排尿・排便障害は患者QOLに大きく影響すると考えられるが,排尿排便障害とQOLの関係は不明な点が多い.本シンポジウムではパーキンソン病における排尿・排便障害の特徴およびQOLに与える影響について概説する.

  • 上野 将紀
    2023 年 60 巻 3 号 p. 110-114
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/25
    ジャーナル フリー

    脊髄損傷では,交感神経および副交感神経の回路網の破綻に伴い,自律神経の機能に広範な障害をもたらす.損傷部位に応じ,血圧制御,排尿,排便,体温調節,性機能,免疫能と広く生体システムを障害し,生活の質を低下させる要因となる.しかし,その回路網や機能の病態と回復の機序は,運動や感覚系に比し理解が遅れているのが現状である.本ミニレビューでは,脊髄損傷において自律神経の回路網に起こる病態とその回復に関わる基礎研究の現状と展望について概説する.回路網と機能が変容する実態を理解し,神経の活動制御や再生など効果的な回路修復法を探索することで,新たな治療標的が見出されると期待される.

  • 朝比奈 正人
    2023 年 60 巻 3 号 p. 119-123
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/25
    ジャーナル フリー

    自律神経系はリンパ器官などを支配して免疫系の調節に関わる一方で,自己免疫機序によりしばしば障害される.自律神経症候を呈する疾患としては,自己免疫性自律神経節障害のように自律神経が選択的に障害される疾患と多発性硬化症や自己免疫性脳炎などのように神経病変の一部として自律神経系に病変を伴う疾患がある.自律神経系の病変部位としては,多発性硬化症などで障害される中枢自律神経(脳・脊髄),自己免疫性自律神経節障害などで障害される末梢自律神経,Lambert-Eaton症候群などで障害される末梢自律神経終末,特発性後天性全身性無汗症(汗腺の障害)などで障害される効果器自体がある.また,視神経脊髄炎でみられる延髄最後野症候群のように疾患に特徴的な自律神経症候もある.本稿ではこれら自己免疫性疾患でみられる自律神経症候とその病態について概説する.

  • 金子 達朗
    2023 年 60 巻 3 号 p. 125-130
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/25
    ジャーナル フリー

    痛みと痒みは互いに相反する感覚として知られているが,中枢神経系における痛みと痒みの相互作用における神経機構についてはまだあまり分かっていない.我々は視床下部に存在するオレキシン産生神経(オレキシン神経)の痒みの制御における役割について研究を進めており,その最新の研究成果について報告する.オレキシン神経欠損(ORX-abl)マウスでは,痒み刺激による引っ掻き行動が有意に抑制される一方で痛み刺激に対する逃避行動が増強することが明らかとなった.よってオレキシン神経は,痛みは抑制する一方で痒みは促進させるという,2つの感覚を逆方向に制御している神経であることが示唆される.

  • Yuki Uchida, Shotaro Kamijo, Motoyasu Honma, Yuri Masaoka, Yuki Sameji ...
    2023 年 60 巻 3 号 p. 131-135
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/25
    ジャーナル フリー

    We reported that estradiol (E2) affects the medial preoptic area in the hypothalamus, a thermoregulatory center, decreases the Tskn (skin temperature) of the tail, and maintains the Tb (body temperature) in the cold in ovariectomized rats. E2 facilitates the thermoregulatory behavior, evaluated by the tail-hiding behavior of rats hiding their tails under their bodies, and suppressed neural activity in the insula of the brain. These results indicate that E2 centrally affects and facilitates autonomic and behavioral thermoregulation in the cold. The effect of E2 on thermoregulatory responses through cold receptors, transient receptor potential melastatin-8 (TRPM8) and transient receptor potential ankyrin 1 (TRPA1), were investigated. E2 suppressed the elevation of Tb by the application of menthol, a TRPM8 agonist; however, it did not affect Tb or Tskn of the tail after the application of cinnamaldehyde, a TRPA1 agonist. Thus, E2 modifies thermoregulation via TRPM8. In young women, Tskn decreased in all phases of the menstrual cycle after menthol application to the dorsum of the foot; however, cold unpleasantness occurred only in the preovulatory phase, the higher E2 concentration phase. Thus, E2 induces mental hypersensitivity to the cold through TRPM8. In ovariectomized rats, the effect of E2 on thermoregulation was investigated through the TWIK-related K+ channel (TREK), a new cold receptor. E2 administration increased Tb after the administration of ostruthin, a TREK agonist. These results indicate that E2 modulates thermoregulation in the cold through TRPM8, TREK, and centrally.

症例報告
  • 朝比奈 正人, 内田 信彰, 濵口 毅, 藤田 充世, 平野 靖記, 中西 恵美, 堀 有行
    2023 年 60 巻 3 号 p. 138-142
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/25
    ジャーナル フリー

    多系統萎縮症における声帯開大不全による閉塞性睡眠時無呼吸の存在はよく知られるが,喉頭痙攣は注目されていない.我々は喉頭痙攣による突然の呼吸不全を呈した多系統萎縮症例を報告し,その病態について考察する.症例は71歳男性.68歳時に歩行時ふらつきを自覚し,当科を受診した.小脳性運動失調と起立性低血圧を認め,脳MRIで小脳と脳幹の萎縮がみられ,多系統萎縮症と診断した.病状は緩徐に進行した.71歳時,日中に誘因なく突然呼吸困難となり,意識朦朧状態で救急搬送された.吸気時喉頭喘鳴と嗄声がみられ,胸部CTで左下肺野に陰影を認め,誤嚥性肺炎として抗生剤投与を開始した.覚醒時の喉頭鏡では声帯は傍正中位でほぼ固定していた.入院1週間後に喉頭喘鳴は消失し,その後,嗄声も消失した.喉頭痙攣で観察される声帯内転筋の攣縮は喉頭喘鳴でみられる所見と類似しており,共通の病態が推測される.

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