2024 年 61 巻 1 号 p. 16-25
視床下部は前頭前野や辺縁系の神経回路網を経て,外界ストレス情報を受ける.脳幹・脊髄の自律神経回路網には視床下部から節前神経細胞への下行性投射路と内臓情報を伝える上行性投射路がある.本稿では視床下部に投射する大脳の神経回路網を中枢性自律神経回路網(central autonomic network, CAN)の上部,脳幹・脊髄の神経回路網をCAN下部と定義し,それらの神経交叉に関する知見を過去の文献から調査した.内臓からの求心性情報を運ぶ上行性自律神経路は脊髄レベルで交叉し,視床下部から脊髄側角に至る下行性交感神経路は,一部が中脳レベルで交叉する.温熱性発汗促進系下行路は延髄・脊髄移行部と脊髄レベルで交叉する.大脳半球の脳卒中患者の臨床報告によれば片麻痺側で皮膚温や発汗の異常が観察され,温熱性発汗に関わる下行性自律神経路が脳幹・脊髄下行路のどこかで交叉している可能性がある.