自律神経
Online ISSN : 2434-7035
Print ISSN : 0288-9250
61 巻, 1 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
第75回日本自律神経学会総会
  • 藤田 裕明, 大垣 圭太郎, 野澤 成大, 椎名 智彦, 櫻本 浩隆, 鈴木 圭輔
    2024 年 61 巻 1 号 p. 2-6
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/03
    ジャーナル フリー

    パーキンソン病(Parkinson’s disease, PD)において睡眠障害は6–9割にみられ,脳幹や視床下部の睡眠-覚醒機構の障害,夜間の運動/非運動症状,併存する睡眠障害,治療薬,加齢や合併症などさまざまな要因が影響し得る.レム睡眠行動異常症(rapid eye movement sleep behavior disorder, RBD)は代表的な睡眠障害であり,疾患前駆期における将来のPD発症を予測する因子と考えられる.自律神経症状はPDにおいて高頻度にみられ,末梢自律神経系に多くみられる疾患病理との関連が注目される.疾患早期に自律神経症状が重度であるとその後のPD臨床経過が不良である可能性がある.

  • 船越 健悟
    2024 年 61 巻 1 号 p. 11-15
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/03
    ジャーナル フリー

    哺乳類の脳幹には,副交感節前細胞からなる脳神経核が存在し,鰓弓運動性の脳神経核とは区別される.一方,魚類や両生類では,脳幹の節前細胞は,鰓や鰓弓由来の筋を支配する運動ニューロンと一体化した神経核を形成するが,核内部では多様な分化傾向がみられる.爬虫類・鳥類の節前細胞は,哺乳類と同様に鰓弓運動性の脳神経核から分離して,迷走神経背側運動核や唾液核を形成している.哺乳類の交感節前細胞は,中間質の内外方向に複数の神経核を形成する.他の動物でも,交感節前細胞は中間質に神経核を形成するが,主となる神経核はそれぞれ,両生類では外側領域,硬骨魚類と鳥類では内側領域,爬虫類では中間領域に位置している.

  • 平井 利明, 黒岩 義之
    2024 年 61 巻 1 号 p. 16-25
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/03
    ジャーナル フリー

    視床下部は前頭前野や辺縁系の神経回路網を経て,外界ストレス情報を受ける.脳幹・脊髄の自律神経回路網には視床下部から節前神経細胞への下行性投射路と内臓情報を伝える上行性投射路がある.本稿では視床下部に投射する大脳の神経回路網を中枢性自律神経回路網(central autonomic network, CAN)の上部,脳幹・脊髄の神経回路網をCAN下部と定義し,それらの神経交叉に関する知見を過去の文献から調査した.内臓からの求心性情報を運ぶ上行性自律神経路は脊髄レベルで交叉し,視床下部から脊髄側角に至る下行性交感神経路は,一部が中脳レベルで交叉する.温熱性発汗促進系下行路は延髄・脊髄移行部と脊髄レベルで交叉する.大脳半球の脳卒中患者の臨床報告によれば片麻痺側で皮膚温や発汗の異常が観察され,温熱性発汗に関わる下行性自律神経路が脳幹・脊髄下行路のどこかで交叉している可能性がある.

  • 黒岩 義之, 平井 利明, 横田 俊平, 藤野 公裕, 北條 祥子
    2024 年 61 巻 1 号 p. 26-37
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/03
    ジャーナル フリー

    Fight or flightの場面ではストレス反応が連鎖的に起きる(発熱,頻脈,逃避行動).頻脈反応には心筋のミトコンドリアカルシウム単一輸送体が関与している.自律性の交感神経反応は危機的状況を切り抜ける上で有利に働く.心理ストレスに暴露されると内側前頭前野→視床下部背内側部→吻側延髄縫線核→褐色脂肪細胞を介して,発熱が惹起される.褐色脂肪はミトコンドリア蛋白質の活性化を経て,熱を産生する.オレキシン産生細胞は循環・呼吸系の同時活性化に欠かせない.視床下部・下垂体系の神経内分泌系反応も急性ストレス反応を支えているが,室傍核がその司令塔である.室傍核の活動指標として,c-fos遺伝子の発現が注目されている.視床下部は緊急事態型(交感神経型,短距離レース型)と平常時型(副交感神経型,長距離レース型)の2極体制からなる.視床下部の恒常性維持機構の攪乱によって,ストレス不耐と慢性疲労が起こる.

  • ―MIBG取り込み低下の原則と例外―
    内原 俊記
    2024 年 61 巻 1 号 p. 40-43
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/03
    ジャーナル フリー

    αシヌクレイン(αS)病変が好発する系は分岐の豊富な細い軸索が広汎な部位に投射するという共通の構造背景を有する.分岐した軸索末端は外界との接点で,そこに豊富なαSは凝集し,軸索を逆行性に進展し細胞体にレヴィー小体を形成する.レヴィー小体病にみられる様々な症状が局在性に乏しいのは分岐した軸索という構造と関連する.軸索の分岐が最も顕著なのが自律神経系で,心臓交感神経末端の機能を反映するMIBGの心筋へのとりこみ低下は,レヴィー病変の存在を示唆する.レヴィー病変は脳幹下部に比較的多いが,脳幹下部から一様に病変が上行するという仮説に合わない剖検例は多く,Multifocal Lewy body diseaseととらえるほうが無理が少ない.さらにレヴィー小体がなくてもMIBG低下が見られるといった例外もある.臨床像と病理像を比較しながら診断精度を高め,より包括的な視点を模索する時期にはいっている.

  • 内山 智之, 山本 達也, 榊原 隆次, 村井 弘之
    2024 年 61 巻 1 号 p. 46-50
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/03
    ジャーナル フリー

    自律神経障害の代表的なものとして,下部尿路機能障害(旧排尿障害)や性機能障害がある.下部尿路症状には蓄尿症状と尿の排出症状(排尿症状・排尿後症状)がある.下部尿路症状とその原因の把握には,質問票などの活用のほか,医療者側からの積極的な病歴聴取が有用である.下部尿路機能障害の病型の正確な把握は非専門医には難しいが,排尿日誌や残尿測定の活用は病型や原因の推察と適切な診療に役立つ.性機能症状には,性的関心や性衝動(性欲)と生殖器自体,性行為の障害によるものなどがある.両障害はともに,QOLの低下のほか,社会活動の制限や精神的な負担となるため,適切に把握し,診療する必要がある.

  • 堀田 晴美, 鈴木 はる江
    2024 年 61 巻 1 号 p. 51-55
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/03
    ジャーナル フリー

    高齢者,特に後期高齢者で急増する骨粗鬆症,頻尿,嚥下困難などの徴候は,日常生活活動度の低下と関連する.日常生活を支える自律神経の機能を解析,評価し,制御することで高齢者の健康維持に効果的なツールを生む可能性があると考え,我々は,日常生活動作に伴う体性-自律神経反射のメカニズムの研究を進めてきた.軽微な皮膚刺激,骨格筋の収縮,食べ物を飲み込むときのような咽頭粘膜の刺激が,体性感覚神経を介して自律神経系の活動を変化させ,それによって心血管機能,泌尿生殖機能,内分泌機能,筋骨格系機能などを調節することを見出してきた.本稿では,体性-自律神経反射メカニズムに関する最近の研究を紹介し,その高齢者医療・介護への応用について考察する.

  • 内田 さえ
    2024 年 61 巻 1 号 p. 57-62
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/03
    ジャーナル フリー

    視覚器において副交感神経は,瞳孔の縮小,毛様体筋の緊張,脈絡膜血流の増加,涙液分泌を起こす.これらの反応には,アセチルコリン(ACh)のM3受容体,一酸化窒素(NO),血管作動性腸ペプチド(VIP)が関与する.視覚器において交感神経はα受容体を介して瞳孔の散大,脈絡膜血流の減少,涙液の軽度な分泌を起こす.嗅覚器において,副交感神経は粘液分泌の促進,粘膜の血流増加に関わる.交感神経は粘膜の血流減少に関わる.嗅細胞では副交感神経と交感神経はともに匂い応答を亢進させる可能性が示唆されている.嗅球の匂い応答性の血流増加反応は,α4β2ニコチン性ACh受容体の活性化により増大することが見出されている.

  • 桑木 共之
    2024 年 61 巻 1 号 p. 67-72
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/03
    ジャーナル フリー

    情動は自律神経の活動変化を介して心拍数や体温などの身体状況に影響を及ぼす.また,快情動が精神だけでなく身体の健康にも良い効果をもたらす事は経験的に誰もが知っている.その中枢神経メカニズムを解明するべく著者らが取り組んできた,マウスにおける快情動研究のための方法論開発について解説する.また,予備的な成果の一部を紹介する.

総説
  • 安東 由喜雄
    2024 年 61 巻 1 号 p. 118-122
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/03
    ジャーナル フリー

    トランスサイレチン型遺伝性アミロイドーシス(ATTRvアミロイドーシス)は,TTRの遺伝子変異が原因となり,アミロイド線維が末梢神経,心臓,消化管,腎臓,眼や自律神経系に沈着し機能障害を起こす遺伝性全身性アミロイドーシスである.本症の多くの症例で,小径線維ニューロパチーを起こすとともに,早期から起立性低血圧,発汗障害,消化管運動異常,勃起不全などの多彩な自律神経障害を認め,患者の生命予後やQOLに影響を及ぼす.近年,肝移植のみならず疾患修飾薬としてTTR四量体安定化剤,遺伝子サイレンシングが開発され,早期に診断し治療に導くことが重要になってきた.本症において自律神経障害は早期から出現することから,我々は様々な自律神経検査法を考案し,診断に役立ててきた.

feedback
Top