自律神経
Online ISSN : 2434-7035
Print ISSN : 0288-9250
第77回日本自律神経学会総会
痛みとは何か? 最新脳科学によって切り拓かれた新しい痛み観
加藤 総夫
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2026 年 63 巻 1 号 p. 16-18

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抄録

2017年,国際疼痛学会は,侵害受容や神経障害なく脳の可塑性により生じる痛み―「痛覚変調性疼痛(nociplastic pain)」を提唱した.これは,原因が治療されれば痛みは緩和するとしてきた従来の常識を覆す概念である.一方,WHOは,器質的異常がなく3か月以上続く「一次性慢性痛」を新たな疾患としてICD-11で分類した.基礎研究では,損傷なしで痛覚過敏を示す動物モデルが開発され,中枢性鎮痛薬の評価に用いられている.慢性痛は情動系・自律神経制御系・内分泌系.運動制御系・覚醒系・そして記憶系を中心とする広範な脳領域を活性化し,そのハブ機構として,腕傍核や扁桃体中心核が主要な中枢として注目されている.痛みは単なる組織損傷の結果ではなく,個体の生存可能性を向上するために脳が生成するシグナルであり,ととらえなおす「脳中心的痛み観」を提唱したい.

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