2026 年 63 巻 2 号 p. 38-47
心拍変動(heart rate variability:HRV)のスペクトル解析は心血管自律神経機能を評価するための非侵襲的な研究法として広く用いられている.HRVの生理学・病態生理学的意義の解明には,従来行われてきた5分間程度の定常状態と仮定された時系列データの解析だけではなく,数十秒以内の短時間のうちに発生する一過性の動的変動の解析が不可欠である.筆者らは,短時間フーリエ変換による時間―周波数解析法を用いて,HRV時系列データの連続スペクトル解析を行い,HRV時系列中に生じる非定常的短期変動と各周波数帯域でのパワー変動との関連を調べるとともに,クロススペクトル解析法の併用により,起立性ストレスが動脈圧受容器反射の伝達関数ゲインを顕著に減少させることを明らかにした.本稿ではHRV時系列データにおける短期間の動的変化の解析例として,それらの結果を解説するとともに今後の研究の展望を示した.