The Journal of Antibiotics, Series B
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紫外線照射及びNitrogen mustard接触によるRacemomycin 産生株Streptomyces racemochromogenus (229株) の変異に関する推計学的研究
柏井 和夫箕浦 健三土岐 卓須貝 哲郎大谷 象平
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1958 年 11 巻 6 号 p. 277-283

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抄録

先に須貝および大谷1), 2) は大阪学芸大学の信夫隆治氏から分与された放線菌の1菌株が比較的毒性の少い新らしい抗結核性抗生物質を産生することをみとめ, 信夫氏の整理番号229に因んで, 仮に229物質と命名し, この菌株がStreptomyces lavendulae 群に属する新菌種であることを決定して, Streptomyces racemochromogenus SUGAI. HINOBU et OTANI と命名した。 229物質は後に大阪大学薬学部の谷山3) らによつてその構造を検討され, Racemomycin O と命名された。 著者らはこの229株の振盪培地中の Racemomycin O 産生能力を上昇させるために, 従来おこなわれている菌株改良法のうちで紫外線照射法とNitrogen mustard接触法とを採用した。実験計画法に基ずいて, 推計学的に実験成績を処理して, 期待した高力価産生変異株を数株作成しえたが, この菌株はいずれも229B物質, 後に谷山4), 5), 6) らにより Racemomycin B と命名された強い遷延性毒力をもつ Streptothricin 群抗生物質を主として産生し, 229物質またはRacemomycinを産生せず, 初期の目的を達することができなかつた。従がつて, 本報告は229株の Bacillus subtilis P. C. I. 219に対する抗菌力を判定の基準としておこなわれた高力価産生変異株獲得に関する推計学的研究に限定された。
原株の形態および培養所見は, 近く信夫により報告される筈であるが, 既に須貝の報告した原株の培養特徴は, 次のとおりである。
(1) チロジンを含む培地で培養当初から深褐色ないし暗褐色の水溶性色素を産生する。
(2) 増殖性菌糸は黄褐色ないし灰白色である。
(3) 気菌糸は白色綿毛様豊富で, 胞子形成と共に灰色をおびた小豆色を呈する。
以上の特徴を失なつた形態的変異株も出現したので, 併わせて報告する。

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