1958 年 11 巻 6 号 p. 284-286
Tetracycline系抗生物質, すなわちChlortetracycline (CTC), Oxytetracycline (OTC), Tetracycline (TC) は極めて類似した化学構造をもち, そのTC基は1種のキレート物質で, Fe, Al, Cu, Zn, Mg, Ca等の2価または3価の金属と結合し1)~4), その結果, 種々の菌に対する抗菌力の低下を来たすことが知られている5)~9)。この際, Ethylendiamine tetraacetic acid (EDTA) を予め加えておくと, EDTAが金属イオンと結合してキレート化合物をつくるために, TC系抗生物質の抗菌力低下は著明に減少する。
最近, 燐酸塩の金属に対する親和性を利用して, TCとメタ燐酸ソーダの複合体または混合剤が使用され, WELCH10-11はcross overして比較した90例の平均血中濃度について, これらの新製品は従来のTC塩酸塩内服時に較べ1.5~2倍高い値を得ている。
一方, TC系抗生物質を金属塩と共に内服した際の成績についての報告は少く, WAISBREN2) がCTCと水酸化アルミニウム・ゲルを併用した際にCTCの血中濃度が低下することを報告し, HARCOUR13) TもTCを硫酸マグネシウムと併用した際, 同様に血中濃度の低下することを述べているに過ぎない。
私はTC・メタ燐酸ソーダ混合剤およびTC塩酸塩を金属塩と共に内服した際の血中濃度を測定し, その成績を比較した。