The Journal of Antibiotics, Series B
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Candida albicansの呼吸に及ぼす Trichomycinの影響V
Candida albicansの脂肪酸酸化とこれに及ぼすTrichomycinの影響
塚原 叡
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1958 年 11 巻 6 号 p. 287-293

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抄録

さきに著者1), 2) は, Candida albicansについて, 各種炭水化物ならびにL-およびD-アミノ酸を供試基質として, 代謝型の最も基本的な呼吸に関して検索し, 本菌種の基質特異性と呼吸型式とを明らかにすると共に, 本菌細胞にも, 高等動植物体細胞にと同様に, TCAcycleが存在し, このCycleが糖代謝の主経路と見なされることを報告した。更にm3), 4), 抗糸状菌性抗生物質Trichomycin (以下 Trm) の作用機作を, 酵素化学的立場から究明しようとして, まず, C. albicansによつて酸化される糖質, L-およびD-アミノ酸等を供試基質とした場合の呼吸作用に及ぼすTrmの影響を検した結果, いずれも本菌に対する最小発育阻止濃度以下の低濃度において, 糖質呼吸に対しては可逆的阻害を, L-およびD-アミノ酸酸化に対しては非可逆的な阻害型式を示し, 結局, いずれの基質を供試した場合にもTrmによる阻害作用がみとめられたので, このようなTrmのもつ呼吸阻害作用の機転として, 末端呼吸阻害が考えられた。そこで, この点を追究したところ, TrmはPyruvateとOxalacetateとの縮合を抑制すると共に, TCAcycle前半の反応過程を遮断することがみとめられ, 更に, フラビン系酵素の代表と見なされるD-アミノ酸酸化酵素に対しても阻害的に働くことから, 第3の侵襲点として, フラビン酵素系阻害が考えられた。また, 阻害度の大きなことと, 阻害型式が非可逆的な点から, Trmの該阻害作用はL-およびD-アミノ酸酸化に対して, より特異的であると見なされた。
他方, C. albicansは脂質に対しどのような代謝型式を示すかに関しては, 既に, TCAcycleを構成する重要なメムバーであり, 二塩基性脂肪酸に属するOxalacetate, Succinate, FumarateおよびMalate等のC4ヂカルボン酸の本菌による酸化は検したが, 更に, Acetic acid以下の数種の飽和直鎖状一塩基性脂肪酸を供試して, 本菌によるこれら脂肪酸の酸化について検索を加え, 併わせて該酸化に及ぼすTrmの影響をも検し, 次の知見を得た。

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