The Journal of Antibiotics, Series B
Online ISSN : 2186-5469
Print ISSN : 0447-8991
ISSN-L : 0447-8991
Fradiomycin (Neomycin) に関する研究 第3報
艀化鶏卵に及ぼす影響
竹内 志郎
著者情報
ジャーナル フリー

1959 年 12 巻 4 号 p. 286-292

詳細
抄録

前篇においては, Fradiomycin (Neomycin)(NMと略) を使用し, 動物実験によつて, 経口投与によつても, 家兎およびマウスの血中, 尿中ならびに諸臓器内への移行をみとめ, また連続経口投与による発育への影響を述べた。本篇においては, NMの艀化鶏卵に及ぼす影響について報告する。
既に, 本学薬理学教室において, ここ数年来, 各種の薬剤を艀化鶏卵の卵白内に注入し, その後の鶏胎仔の発育に及ぼす影響について韓告されている。すなわち, 東郷1) はStreptomycin (SMと略) は, 種卵1個当り20mgで発育を促進し, それより高濃度または低濃度では, 一時的に発育を抑制するとし, 竹内2) も, SMの鶏胎仔Ca代謝に及ぼす影響をみ, SM負荷によつて鶏胎仔の発育は低濃度において比較的促進するが, 高濃度では抑制されるか, または, 対照と変らないと報じた。川北3) は, SMおよびヨードカリの単独ならびに併用投与によつて, 各例とも対照と大差がないとした。沼尾4) は, Leucomycin (LMと略) とErythromycin (EMと略) を用い, LMの適量は発育を促進するが, それより高濃度または低濃度では抑制的に作用し, EMでは各例とも対照と差をみとめなかつたと報じた。月岡5) は, Bornylamine penicillin Gを用いて鶏胎仔の発育をみているが, 対照のProcaine penicillin Gの場合は軽度ながら促進的に作用するが, 本剤ではむしろ抑制的に作用するとした。以上の, 主として抗生物質を用いて鶏胎仔発育を観察したもののほか, 河内6) のAtropine, 広田等7) ~9) のParotin, 武藤10) のINAH, 角尾その他11) のNicocine, 堀2) ~13) のPASおよびDulcin, 和田4) のSaccharin等の実験成績がある。NMに関しては, WAKSMAN15) 等が鶏胎仔にSalmonella pullorumを感染させ, これにNMおよびSMを用い, 鶏胎仔の生存率からNMはSMよりはるかに効果的であることをみとめている。
茲において私は, 胎生期の薬理学的研究の一端として, NMの鶏胎仔の発育に及ぼす影響ならびに尿嚢水中への排泄状況を検し, NMの生体内運命を解明する一助とした。なおNMの毒性を吟味する目的から, 胎仔の肝および腎の病理組織学的検索もおこなつた。

著者関連情報
© 公益財団法人日本感染症医薬品協会
前の記事 次の記事
feedback
Top