The Journal of Antibiotics, Series B
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整形外科領域におけるPELS (Propionyl Erythromycin Lauryl Sulfate) の使用経験
大戸 輝也大畠 襄真田 孝三本間 光正吉松 俊一田辺 恵造
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1962 年 15 巻 4 号 p. 193-197

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抄録

1935年のDOMAGKのProntcsilの発見にはじまる化学療法の発達と, 1940年のFLOREYのPenicillinの臨床効果の確認に端を発する抗生剤の進歩には素晴しいものがある。Penicillin以後応用されている抗生剤は20種類におよび, 細菌感染症の治療は一応完成されたかにみえた。しかし, 近年抗生剤の乱用によつて抗生剤によるアレルギ-現象, 菌交代現象, 病原菌の耐性の獲得のような好ましくない問題がおこつて来た。特に病原菌の耐性獲得は抗生剤の効果を著るしく妨げるものとして, 外科領域では耐性ブドウ球菌が最大の関心事となつている。そこで, この病原菌の耐性に打ち勝つような, 強力で副作用の少ない抗生剤の出現が待たれたわけである。最近の諸家の報告1~12)による各種抗生剤の細菌感受性の傾向をみると, Chloramphenicol (CP) とErythromycin (EM) は, ともに耐性菌発現率の比較的低い抗生剤としてみとめられている。EMは1952年MCGUIREによつてStreptomyces erythereusから分離されたもので, グラム陽性菌, Virus, Rickettia, Spirocheta, Protozcaか等に対して作用する抗生剤であるが, 経口投与で高い血中濃度を得ることが困難であつた。我々が先に整形外科領域の感染症に対する治療効果を検討したEM誘導体であるErythromycin propibnate (Ilosone)13)は, 経口投与でかなりの血中濃度を得ることができたが, 今回はSTEPHANS & ANDERSON14, 15)によつて, さらに高い血中濃度を与え, 内服時の苦味がないことをみとめられたPropionyl erythromycin lauryl sulfate (PELS) を整形外科領域の感染症に使用する機会を得たので, そめ臨床成績を報告する。

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© 公益財団法人日本感染症医薬品協会
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