The Journal of Antibiotics, Series B
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抗生物質SPectinomycinに関する基礎的研究
小林 民子佐藤 キミ子中沢 昭三
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1966 年 19 巻 2 号 p. 138-142

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抄録

本論文の要旨は昭和40年9月新潟大和ホールにおける第12回日本化学療法学会東日本支部総会ならびに昭和40年11月20日大阪府医師会館における第13回日本化学療法学会中日本支部総会スペクチノマイシン“シンポジウム”基礎部門にアンケートとして提出した。
Spectinomycinは1961年米国Upjohn社のMASONら1) が報告した注射用の新らしい広範囲抗生物質で,別名Actinospectacinといわれ,商品名はTrobicinと呼ばれている。僅かに遅れて,Abbott社のOLIVERらが報告したM-141と呼ぶ物質は,後に同一物質であることが判明した。Upjohn社の生産菌は放線菌Streptomyces spectabilis NRRL 2792株であり,Abbott社の菌はStreptomyces flavopersicusと命名された新放線菌のNRRL B 2820株である。その構造式はHOEKSEMAらによつて発表され, 右に示すようなものである。
Spectinomycinは,C14H24N2O7・6H2O融点65~72℃ の塩基性白色結晶性物質で,その硫酸塩C14H24N2O7・H2SO4・4H2Oは,融点185℃ であり, 水, ピリジンにきわめて易溶, アルコールおよびアセトンに可溶, 多くの有機溶剤に不溶で, 25℃における水溶性は, 塩基1720mg/ml, 硫酸塩217mg/mlである。Upjohn社の報告によれば, 本物質はin vitroでは, 広範囲のグラム陽性菌およびグラム陰性菌に対して抗菌作用をもち, 通常栄養培地における抗菌力は比較的弱いが, 全血あるいは血清添加培地ならびに尿中では活性があり, 種々の試験的動物感染症に対して, 非経口的に本物質を投与したばあい, クロラムフェニコールに匹敵する効果が得られる。また,本物質を非経口的に投与したばあい, 迅速に吸収且つ排泄され, 継続投与においても体組織に蓄積されず, 毒性は著るしく低い特徴をもつと述べている。
さて, 私どもは, 本物質について細菌学的基礎研究を実施した結果, 2, 3の知見が得られたのでここに報告する。

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