The Journal of Antibiotics, Series B
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B. brevisの産生するポリペプチド性抗生物質に関する研究 第3報
Brevolin誘導体の毒性及び抗菌作用について
元村 裕
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1956 年 9 巻 1 号 p. 14-17

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抄録

微生物の産生する抗生物質の分離は数多くなされたが, 有芽胞細菌では, Polymyxin, Bacitracin等が実用の域に達しているのに過ぎない。これは単に生物学的活性が少ないという理由のみでなく, その多くは体内の毒作用が強いことに起因しており, これがどのような機作にもとずくものであるかを探究することは, 興味あることと思われる。私がB. brevis(B-451) から分離した物質“Brevolin”は, 第1報及び第2報にその詳細を発表したように, グラム陽性, 陰性細菌および抗酸性菌等に広範な抗菌力をもつが, その毒性はマウス腹腔内注射によりLD50=12.32mg/kgというかなりの毒性を示すため, 実用には供せられない。そこで私は, これに対し化学構造上になんらかの変化を与え, その結果, 抗菌力や毒作用にどのような変化がおこるかを検討し, その変化を帰納的, 化学的に探求することによつて, 抗菌力及び毒作用がBrevolin分子内のどのような構造に起因するか, 且つまた, その毒作用と抗菌力の相関々係を明らかにし, ひいては抗菌力を損わずに無毒化できる1つの手掛りができるのではないかと考え, 次の実験をおこなつた。
Brevolin分子中に存在するアミノ酸は, Ornithine, Histidine, Serine, Glycine, Glutamic acid, Tyrosine, Valine, Leucine, Arginineの9種であり, これらのうち最も生物学的活性に影響をもつものと考えられる基は, 本物質中の遊離アミノ基であるOrnithineのδ-アミノ基, Histidineのグリオギザリン核, Arginineのグアニヂノ基, TyrosineのPhenol性水酸基であるが, 反応性基としてはいずれの基も選択的に作用する試薬がなく, 反応性基を1つ1つ検討してゆくことは不可能である。ヨードはHistidineのグリオギザリン核とTyrosineに由来するPhenol核に対し特異的であり, また, LI(1)はTyrosineのヨード化はHisitidineのヨード化速度よりも30倍~100倍早く, 試薬が過剰に存在し, 反応時間が長い時のみHistidineがヨード化されることを指摘している。また, ホルマリンが細菌毒素に作用して, これを無毒化することは早くからヂフテリア毒素のトキソイド化において認められ, 抗生物質においてはLUWIS, SCHALLES, MANN (2)(3) によつてGramicidinをホルマリンで処理することによつて, その毒性の低下の著るしいことを報告されている。本邦においても, 西村(4)が抗生物質の溶血能力の不活性化について報告している。そこで私は, 先ずホルマリン, ヨードの誘導体をつくり, その作用を検討した。

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