1956 年 9 巻 4 号 p. 148-152
先に著者ら (1) によつてFig. 1のような過程で粗Sarkomycin Na塩から得られた結晶E1, E2, S1, S2およびS3のうち, E1, E2およびS2はEHRLICH腹水癌に対して抑制力が極めて弱いか, または抑制力を有しないので, これらはSarkomycinの抗腫瘍性を代表するものとはいえない。 それならば, S1またはS3がSarkomycinの腹水癌抑制力の主体をなすものかどうか, すなわちSarkomycinの純結晶と見られるべきか否かについて, 今回は細菌学的に検討を加えた。 その結果, S1とS3は細菌学的には極めて類似しており (後に(2)S3はS1と細菌学的にinactiveなS2の分子化合物であることが明らかにされた), かつ両物質ともそのままの形で粗Sarkomycin Na塩中に存在するものではなく, 抽出の過程, 特にH2Sを通ずることによつて化学的に変化したものであろうという結論に達したので, ここに報告する。