The Japanese Journal of Antibiotics
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小児尿路感染症の化学療法とその効果判定基準に関する2~3の考察
懸濁用Cephalexinによる治療成績を中心として
小林 裕赤石 強司西尾 利一後藤 薫相原 雅典原田 敦喜小林 祥男
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1972 年 25 巻 2 号 p. 104-119

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抄録
尿路感染症は, 小児では, 呼吸器感染症についで多い疾患とされているが1~3), 従来比較的簡単に考えられ, 起炎菌の検出さえおこなわれていないばあいもあり, その取扱いに慎重さが欠けているうらみがある。もちろん, 炎症が膀胱のみに限局し, しかも尿流障害がないばあいは問題が少ないが, その証明は困難であり, 小児ではこのような急性単純性膀胱炎はむしろ例外であつて4), 膀胱炎は多くは腎盂炎と共存し, 腎盂炎があれば多くは病変が腎実質にもおよんでいる5, 6)。WEISS & PARKER7) は, 腎実質がおかされていない腎盂炎はないと述べており, 下部尿道を除く尿路の細菌感染症に対して, 一般に腎盂腎炎という名称が用いられている。
腎盂腎炎は, その末期には, 高血圧症や血管障害をきたして腎不全におちいる例が少なくなく, 慢性または潜伏性腎盂腎炎は, 慢性糸球体腎炎より頻度が高いといわれる7)。RHOADSら8) は, 成人の剖検例のうち腎盂腎炎が少なくとも20%を占めると述べているのに対して, 小児ではNEUMANN & PRYLES6) は1999例の剖検例中で1.6%と, 成人にくらべて低率ではあるが, いずれもその生前診断率が約1/3にすぎないことは注目されねばならない。STANSFELD9) は, 一般地域での頻度は, 人口1,000に対し, 男児0.17人, 女児0.4人であつたと述べ, 入院患者中の頻度について, BURKE5) は3~4%, STANSFELD9) は1.23%, 福田2) は1.28%と報告している。腎盂腎炎が出産期, 老年期に初発する頻度も高い3) にしても, かなりの症例は小児期に発症し, 進展して成人期にいたり, やがては腎不全におちいる連続性の疾患として理解すべきであること3, 4)を考えると, 早期の適確な診断による充分な治療と, その慢性化の防止は, 小児科医にとつて重要な課題である。
小児細菌感染症に対する懸濁用Cephalexin (CEX-Susp.) の使用成績については既に報告したが10), その後, 尿路感染症についてさらに検討を加え, 以前の24例を含めて70例に達したので, その成績について述べるとともに, 小児尿路感染症の化学療法における2~3の問題点について考察してみたい。
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© 公益財団法人 日本感染症医薬品協会
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