1973 年 26 巻 1 号 p. 49-54
3', 4'-Dideoxykanamycin B (以下DKBと略記) は, Fig. 1のような化学構造をもち, 梅沢ら1) によつてカナマイシンBから合成された新抗生物質である。梅沢ら2, 3) は, アミノ配糖体抗生物質の耐性機序を研究し, カナマイシンにおいては, R因子耐性菌や, 耐性ブドウ球菌, 緑膿菌の耐性が多くのばあい, 3'-OH基に対するリン酸化酵素の存在によるものであることを明らかにした。DKBは, これらの知見にもとずいて, カナマイシンBのもつともリン酸化されやすい3'-OHと4'-OHとを水素原子に置換したものであり, 多くの耐性菌をはじめ, カナマィシン系抗生物質に感受性の少ない緑膿菌にいたるまで, 強い抗菌力をもつている。
著者らは, このDKBについて, その有効性と安全性に関する基礎研究の1っとして, トリチウムで標識されたDKB (以下3H-DKBと略記) を使用し, ラットにおける血中濃度, 尿中排泄, 代謝と体内分布について検討した。