The Japanese Journal of Antibiotics
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3', 4'-Dideoxykanamycin Bの吸収, 排泄, 分布および代謝 第2報
ウサギおよびイヌにおける吸収, 排泄および分布
藤田 正敬福島 寛二安部 政弘友野 法子梅村 甲子郎
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1973 年 26 巻 1 号 p. 55-60

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抄録

新らしい三環性アミノ配糖体抗生物質である3', 4'-Dideoxykanamycin Bのウサギおよびイヌにおける吸収, 排泄および分布などの生体内動態を本物質の硫酸塩を用い, 微生物検定法によってしらべるとともに, 硫酸Gentamicin (GM注射液) と比較した。
(1) DKB 20mg(力価)/kgを蒸留水に溶解して, ウサギの筋肉内に投与したときの最高血清中濃度の平均値は57.2mcg (力価)/ml, 生物学的半減期は1.389時間であった。また, 同量を静脈内に投与したときの生物学的半減期は1.344時間であつた。投与後8時間までの尿中排泄は, 筋肉内投与では静脈内投与にくらべ約2時間程度遅れるようであつたが, 排泄率はそれぞれ75.4%, 75.8%と, ほとんど同じであつた。
以上のことから, DKBは体内に分布したのちは, 投与経路が異なつても同一の挙動を示すものと考えられた。
(2) DKB 20mg (力師)/kgをイヌの筋肉内に投与したときの最高血清中濃度は約58.6mcg (力価)/ml, 生物学的半減期は約1.477時間, また全分布容積は0.264L/kgであつた。注射局所からの拡散速度, または最高血清中濃度発現時間などは, 蒸留水に溶解して投与したばあいと, 注射液として投与したばあいで多少相違がみとめられたが, 比較対照としたGM注射液で, 実験間の相違が同程度にみとめられたことから, 溶媒の相違よりはむしろ, 注入の仕方, または局所筋の生理状態などが大きく影響したものと考えられる。薬剤の特性をよく表現すると考えられる薬動力学的定数の1つである全分布容積Vdは, GM注射液とほとんど同等で, 実験間の差は, イヌの系統差, あるいは性差に起因するものであろう。血液中からの消失速度は, そのような実験間の相違に影響をうけず, GM注射液よりも遅い傾向であつたが, 著るしい相違ではなかつた。また, 投与後10時間までの尿中排泄率は, 約64.0%で, GM注射液のそれと大差はなかつた。
(3) DKB 50mg (力価)/kgをウキギの筋肉内に投与したばあいの主要臓器中濃度は, 肺においてはGM注射液よりも約2倍高かつたが, 他の臓器においては両者ほとんど同程度の値を示し, 本物質の生体内分布性は, 質的, 量的にGM注射液とほとんど同様であると考えられた。
(4)以上の結果から, 3', 4'-Dideoxykanamycin Bのウサギおよびイヌにおける生体内動態は, Gentamicinのそれと大差ないものと考えられた。

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