The Japanese Journal of Antibiotics
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小児化膿性髄膜炎の化学療法
小林 裕
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1975 年 28 巻 4 号 p. 567-580

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抄録

抗菌剤の出現によつて, 化膿性髄膜炎による死亡は著減はしたが, 本症はなお難治の疾患といわねばならない。QUAADE & KRISTENSEN1) の658例の集計によれば, 流行性髄膜炎3.7%, インフルエンザ菌性髄膜炎9.5%, 肺炎球菌性髄膜炎17.3%の死亡がみられ, HAGGERTY & ZIAI2), KOCHら3)の成績も大同小異である。これらは, 広域Penicillin(PC)出現以前の報告ではあるが, 今日でも事情はそう変つておらず, PCG大量にまさる流行性および肺炎球菌性髄膜炎の治療法は出現していないし, インフルエンザ菌性髄膜炎に対する Ampicillin (ABPC) とChlormphenicol(CP)の効果はほぼ等価4) であり, 長期観察成績によれば, 生存例の半数以上に神経学的後遺症がみとめられ, 予防の重要性が力説されている5~7)。
以上は乳児期以後の髄膜炎の状況であるが, 新生児期ともなると, 60~90%が死亡し, 生存例の約半数に後遺症がみられる8~13)という惨状である。
したがつて現在, 新生児期にはABPCとGentamicin(GM)の併用, 以後はABPC単独使用が代表的なものとされている14, 15) けれども, それに安住することは許されず, ますます考究が重ねられなければならない。
われわれは先に, Cefazolin (CEZ) による治療成績と, 各種抗菌剤の髄液中への移行および髄腔内注入の副作用について, 多数の文献を整理照合した成績を報告した16)が, 今回はその後の成績を加えて, 現時点での考え方について述べてみたい。

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