The Japanese Journal of Antibiotics
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口腔癌に対するNK 631の効果に関する臨床的研究
大橋 靖阿部 正樹斎藤 憲水谷 英守大西 真上田 昇
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1979 年 32 巻 2 号 p. 259-264

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抄録

ブレオマイシン (以下BLMと略す) は, 1966年, 梅沢らによつて発見され1), 扁平上皮癌や悪性リンパ腫に有効な抗腫瘍剤として広く一般に使用されてきている2)。しかし, 副作用として肺線維症の発症が知られており, 時に致命的な結果を招くことから, 薬剤の改良がはかられ, 一方では投与法の検討がおこなわれてきた。
口腔癌は, その大多数が扁平上皮癌であることから, BLM臨床応用の初期から, 多くの治験例が積み重ねられてきており, その有用性について多数の報告がみられる。しかし, 前述したような重篤な副作用をともなうことから, より安全な薬剤の開発が望まれていた3) 。
NK631は, BLM酸のカルボン酸とN-(3-アミノプロピル)-α-フェネチルアミンの1級アミノ基を脱水縮合したFig.1の構造をもっBLM誘導体の硫酸塩である。構造式に示されるように, NK631はBLM類に共通な3個の塩基性基 (pka7.3, 4.7, 2.7) のほか, 側鎖に1個の塩基性基をもつ。銅をキレートして青色を呈し, 紫外部吸収は292nmおよび243nmに極大を示すが, 銅をキレートしていない状態では243nmにおける吸収は極大でなく, 肩を示す。この点は一般のBLM類と同様である。結晶化せず, 無色無定型粉末として得られる4)。

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