The Japanese Journal of Antibiotics
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犬を用いての実験的化膿性中耳炎の作成と, 作成した中耳炎に対するCefmetazoleによる治療試験
藺守 龍雄松田 浩珍東条 雅彦鎌田 洋一
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1982 年 35 巻 9 号 p. 2277-2287

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抄録

化膿性中耳炎は, 人の耳鼻臨床領域における感染症として重要視されているが, 主な起炎菌として, staphyJococcus, Diplococcus, streptococcus, Pseudomonas等が挙げられている1)。
また, 治療法については, 古くから実施されてきた外科的手段が慢性型の場合, 今日なお有効に実施されているが, 急性型においては近年, 進歩の著しい化学療法が効果を上げている2)。
我々は, 今回, 犬を用いて, 化膿性中耳炎の実験モデルを作成し, さらに作成したモデルを使つて, Cef症netazole (CMZ;セフメタゾン, 三共) による治療試験を行つた。
犬の化膿性中耳炎の自然発生例は, 決して少なくないことが近年SPRUELL3) やFRASERら4) によつて明らかにされた。すなわち, 多発する犬の外耳炎の局所的治療が効を奏さず長期にわたつたものの約半数が中耳炎を併発していたし, また, 急性外耳炎と診断されたものの16%が中耳炎を併発していたと報告している3)。
犬の化膿性中耳炎の臨床的診断は, その初期段階で確信を得ることはほとんど不可能に近い。理由として, 犬の外耳道が人に比ペてかなり長く, かつ湾曲が著しいために, 普通の耳鏡を用いた場合, 鼓膜付近の観察が極めて困難である点が挙げられる。しかし, 慢性化して鼓室粘膜の線維性増殖による肥厚が顕著になつたもの, または鼓室内に多量の膿汁が貯留したものなどについては, X-rayによる診断が可能となる。
犬の中耳炎発症には前述のように外耳炎の存在, または発症と因果関係が深いとの推論が今や常識化しているが, 一方健康犬について中耳内の細菌フローラを調査した報告によると, staphylococcus, streptococcus, Escherichiacoli, Mficrococcus等が中耳内に常在することがかなり多いと指摘されている4)。
ただ, 犬の化膿性中耳炎の起炎菌として挙げられているのはStophylococcusを除いては, 通常健康犬の中耳内から発見されることの無いPseudomonasやProteus, およびYeast類が主であり, 他はきわめて少ないとされている。以上のような状況から, 今回われわれは犬の化膿性中耳炎の実験的作成にStaphy1ococcus aureusを選んだ。本実験は1980年12月から1981年12月の間に行つたものである。

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