The Japanese Journal of Antibiotics
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Gentamicin点滴静注の臨床的研究
中村 孝橋本 伊久雄沢田 康夫三上 二郎斉藤 美知子八反田 薫戸次 英一西代 博之中西 昌美葛西 洋一出口 浩一
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1983 年 36 巻 1 号 p. 55-70

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抄録

Aminoglycoside系抗生剤のGentamicin (GM), Dibekacin (DKB), Tobramycin (TOB), Amikacin (AMK)などは, グラム陽性菌から陰性菌に及ぶ幅広いスペクトラムを有し, 少量にて殺菌的な抗菌性を発揮する比較的低濃度の最小阻止濃度 (MIC) を持ち, しかも炎症組織への移行が良好な抗生剤として, 今日広く使用されている。しかし一方において, 腎毒性と聴器及び前庭神経障害の副作用が起り易く, 蓄積性もあるとされ, 有効量と副作用発生量との差が比較的少ない薬剤とされているために, 本邦においては, 筋注による使用だけが認められている。しかし筋注による投与は, 局所痛, 注射部位の硬結, 投与量の制限などの問題があり, 又白血病などの出血傾向のある患者では, 注射部位の出血の問題もあり, 更に小児, 特に新生児, 未熟児では筋萎縮症の発生があるために反復, 長期間の使用は困難であり, これらの点から適応が制限されている現状である。
その一方において, 現在広く使用されているPenicillin系合成抗生剤及びCephalosporin系抗生剤に対する耐性菌の増加が近年問題となり, グラム陰性桿菌群がこの耐性菌の大部分を占めることから, Aminoglycoside系抗生剤の効果が再認識されることとなつてきた。
欧米諸国においては, 以前からAminog1ycoside系抗生剤の静注又は点滴静注による使用法が検討され, 臨床面に応用されてきている1~4, 6~8)。本邦においても, 最近Aminoglycosideの点滴静注による投与法の検討が行われるようになり, 特に筋注との比較が血中濃度, 尿中排泄の動態について検索され, 臨床使用経験の報告と相まつて, 点滴静注法の有用性が認められてきている9~14)。これらの報告によると,筋注投与法と30分ないし1~2時間の点滴静注時の血中濃度のピーク値の数値はほぼ等しく, GM60mgの筋注及び点滴静注では, そのピーク値は4~6μg/mlであるという9)。
一方, 抗生剤投与時に, その目的とする炎症組織の抗生剤濃度を測定することは, 起炎菌及びそのMICを検討することと共に臨床上極めて有意義であり, 臨床効果の検討と併せて検討すれば, より一層の価値があると考えられる。著者らはすでにAminoglycoside系抗生剤の点滴静注による検討をDKB, 16, 30, 33) TOB, 31) AMK32) について行い報告したが, 今回はGMについての検索を, 点滴静注による臨床効果, 起炎菌のMIC, 更に筋注及び点滴静注による炎症組織内濃度の検索を行つて, 若干の興味ある所見を得たので報告する。

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